僕は、政府の情報を教えるのが普段の仕事と言える。
だから、先程のビルの構造でわからないところがあれば勝手に書いてもいい、と思う。
いや、問題はそこじゃない。
僕が勝手に書こうが書かまいが、どちらでもいい。
問題は、『何故平和の部隊が政府の領地にあるビルの構造を知っているのか』ということだ。
「レイさん、政府のビルの構造をなんでわかってるんですか?」
この質問をするのは当たり前だと思う。
政府の領地に入るなんてまず出来ないはずだ。
監視している森の入り口。
そこのずっと奥には、政府の警備員が立っている。
政府の領地に入った、ということはその警備員達を倒したということ。
もし、倒したり、殺したりすれば政府の方でニュースとして流れる。
テレビ局の人もニュースにするのは嫌々だろうけど、人が死んだのならしょうがない。
となるはずだ。
しかし、そんなニュース全く来ていない。
つまり平和の部隊は、『バレないように』領地に入ったのだ。
「どうやって領地に?」
「んー。」答えたくないような眠たそうな声を出す男性。
いつ見ても情けない。
「いやあ、どうも平和の部隊にはワープとかテレポートとかできる人が『何故か』多くてさー。
なんでだろうねー。」
本音なのか偽ってるのか分かりにくい。それがレイさんなのだから仕方ないのだけれど。
「その何故かって言い方、意味が深そうですね。
人工的にやったとかですか?」
これはさすがに冗談。
だったはず。
『はず』じゃない。冗談だった。
レイさんは、とくに日常と変わることなく、眠そうに、ヘラヘラと、全くいつもと変わらない様子で、
「どうだろうねー。」
と答え、笑った。
平和の部隊は何かとぶっ飛んでいる。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。