第10話

火災現場で。
1,222
2017/11/05 12:44
やっぱり、いつもの達也さんじゃない。

どこか上の空な感じだった。

私はお茶をテーブルの上に置いて、ソファに座った。


なかなか話そうとしない達也さん。

私から聞いたほうがいいのかな?


「何か…あったんですか?」

すると達也さんはこちらを見て寂しそうな、悔しそうな顔をした。


どうして…


「どうしてそんな顔をするの…」

私は達也さんの頬に手を当てた。


「俺は人殺しと同じなのかな…。」

「どうゆう…」

達也さんは私の手を包み込んで手を握った。



「今日、俺は現場にいる人を救出するために中に入った。」

「それで、実際、中で『助けて』って声が聞こえたんだ。」

「俺は、清水さんと一緒にその人が見えるところまで行った。」

「女の人と、その人の子供だった。」

「女の人は子供を抱えながら助けを求めていた。」


「でも…。」


「手を差し伸べようとした瞬間…」


「二階の屋根が目の前に崩れ堕ちて来た。」


「その時、女の人の叫び声が聞こえた。」


「でも、その叫び声は…」





「消えて行った…」

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