((目線自分に戻ります))
「初めて会った時、一番最初に思ったのが、イケメン!って事だった。」
「笑っちゃうよね。」
「街をフラフラ歩いて、ご飯食べたりした。」
「私達は、すぐ意気投合して、お兄ちゃんってこんな感じなのかなって思った。」
「それから月に一回会うか会わないかくらいのペースで会っていた。」
「でも、あなたにそれを言わなかった。」
「なんか、言いづらかった。」
「なんでも話せる!って思ってたのに、
いざ話そうとすると、お母さんを裏切ったお父さんを憎らしく思えた。」
「私は、お父さんを憎みたくなかった。」
「だから私は家族以外の誰にも話せなかった。」
「いや、話さなかった。」
「いつかは話そう。」
「そう思ってた。けど、」
「こんなタイミングになって…ごめん。」
そうだったんだ…。
「大丈夫。話してくれてありがとう。」
「でも…」
「この事実を知った後も、知る前と変わらないと思う。」
「私は達也さんの事が好きだし、美紅も大好き。」
「それは絶対に変わらないよ。」
と微笑む。
「まぁ、正直、話してくれなかった事はショックだけどー?」
少しおどけて言ってみた。
「あなたー!!」
美紅は抱きついてきた。
「ゔっ」
「ごめんねぇ、ごめんねぇ。」
「だから良いって。だいじょーぶ!」
私は美紅の頭を撫でた。
ふと、達也さんの方を見る。
目があった。
“ありがとう”
口パクで達也さんが言った。
私は笑って返した。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。