スーパーから帰ると、もう10時前になっていた。
急いで達也さんのとこに行かないと、遅れちゃう。
私は素早く食材を冷蔵庫に入れ込み、出発する準備をした。
「あのー、すいませんー!」
私は消防署に向かって大きな声で言った。
「…。」
誰も来てくれない。
出動してるのかな?と思うものの、車は全てある。
「あれ…?あなたさん…?」
後ろから声をかけられた。
この声は…
私は振り返る。
「あ、村田さん!お久しぶりです。」
「お久しぶりです!」
村田さんは今、署の中で1番下の消防士さん。
「達也さんにご用ですか??」
「あ、そうなんです。お弁当忘れちゃって…。」
「なるほど。実はですね、今、裏で訓練してるので、
もしよかったら“カッコいい達也さん”を見ていきません?」
カッコいい達也さん…。
「はい!ぜひ!!」
私は元気よく返事をした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!