第5話

考えごと
101
2017/11/07 15:16
優夢
優夢
…………ってことで、今夜は柚音-元いじめっ子達のリーダーの夢をすり替えたいの
ルアリー
ルアリー
わかった、親しくなれたのならいい。
優夢がそれを承知したのならボクもそれに応じよう
家に帰ってから、優夢はルアリーに今日あったことを話した。
優夢
優夢
あ、それでね…
ルアリー
ルアリー
……ん?
優夢はふと思い出した。
あなたが言っていたことだ。
たった今、ふと疑問に思ってしまったのだ。
あなたは何故夢をすり替えたということを把握、理解したのか。
優夢
優夢
…今朝、HR前にあなたって子と話をしたの。
あなたが私に話したいことがあるっていうからなんだろうって思ったら私が『夢をすり替えることが出来る』ことを知っていたんだ…
ルアリー
ルアリー
……夢工房に入れる優夢以外の人間の意識は1度意識を落としているはずなのにそれは変だな
優夢
優夢
そしてあなたはそれを柚音に話した-だから柚音は私に夢をすり替えてって頼んだの
ルアリー
ルアリー
ふぅむ………
ルアリーは「え?それ不味くね?」なんて思いながら優夢の話を聞いていた。
生き残りの魔導人形-それがボクで、その正体を探られたら終わりだ。
あなたって子には悪いが-記憶の改竄をいつかさせてもらう。
優夢には勿論黙るつもりだ。
優夢は優しいからそんなことやめてあげようって止めるに違いないからね。
優夢
優夢
それで-って、話聞いてた?
ルアリー
ルアリー
…んあ、悪い悪い。
まぁ、その柚音?って子の夢をすり替えることは認めるよ
優夢
優夢
本当!?良かったー
心から安心したような表情をする優夢に対しルアリーは苦い表情をしていた。
ルアリー
ルアリー
(もしこれでボクの正体がバレたら………考えるだけでも恐ろしいな)
さっきまで考えていた記憶の改竄ってのは-実は結構難しいことで、決して誰もができる訳じゃあない。
当然、ボクは自分の正体を探られたくないが故に血の滲むような努力の末改竄する術を扱えるようになったのだが。
あなたって子がどんな子かもボクは知らない-というか会ったことすらない。
まず、今日この時に初めて聞いたようなもんだ、無理もないだろう。
-22時47分
今夜は早めに始めよう、とルアリーは優夢に言った。
優夢は疑うことなく頷き、早速あの宝石の美しい幻想的な回廊へ向かった。
優夢
優夢
…………柚音、あなたの夢は私が…
優夢は決意を固めると精神を統一させた。
ルアリー
ルアリー
ん、この子でいいんだね?早速始めて
移動して2分、ルアリーはいきなり柚音を回廊へ運んできた。
優夢は夢を送り込む。
夢に込められた思いを一欠片も残さず、完全に送り込む。
優夢
優夢
…………出来、た。次
柚音に無事良い夢を送り終わると次の人を呼んだ。
次はかなり窶れた様子の少年だった。
さっきまで魘されていたのだろうか-意識こそないものの、その表情はどこか苦しそうだった。
優夢
優夢
(こんな苦しそうな顔で………早く、私が救わないと…私が…)
ルアリー
ルアリー
…優夢?
優夢
優夢
っ………ごめ、ん…少しぼーっとしてた。
………はい、終わったよ
4人目にして早くもコツを掴めてきた。
コツは意識を失った-『対象者』と軽くシンクロすること。
意識下にある無意識-そこに少し自分の意識を潜らせる。
段々と、その感覚が掴めるようになってきた。
ルアリー
ルアリー
……楽しいでしょ、相手の意識下に入るって。
でもこれを本当に心の弱い人にさせるとね、その人は意識を奪われたままになるんだ
優夢
優夢
それってつまり……
ルアリー
ルアリー
あぁ、生きてはいるが意識はない-植物状態になるんだ。
怖いだろう?でも大丈夫。
優夢を赤ちゃんの頃から知っていたボクに不覚はない。
ボクは優夢のすべてを信じているから、敢えて何も話さずに危険なことを頼むんだ。
実はかなり難しいことだったりするんだよ
優夢
優夢
……どうして?
ルアリー
ルアリー
大切な人がそれで命を落としたら-そんなことを考えたらこっちの頭が恐怖で一杯になるからさ。
でもそれは-ボクは相手を信じきっていないからだと考える。
相手を信じているからこそ、危険なことも頼めると思う。
どうでもいい人にそんなことを頼むことこそ1番簡単だと思うね。
その人が死のうが自分自身はどうでもいいと思っちゃってるわけだから、なんの興味も持たないでしょ?
どうでもいい人が苦痛を感じたところで-何も思わない、違うかい?
そう言いながら人形が浮かべられないような不敵な笑みを浮かべた彼を見て、合理的で非道、その言葉が相応しいと思った。
これを拾った日、つまり昨日。私はこいつを殺しておくべきだった。
人を扱き使っているという考えはない、今のルアリーの言動からはそう推測できないこともない。
何故なら彼はそんなことを一言も言っていないから。
私は-たとえ死んだ人が私にとってどうでもよかったとしても、死因によっては気の毒に思うことだってあるだろう…。
優夢
優夢
……ルアリーって変
ルアリー
ルアリー
え、どこが?
-自覚なし、か。
驚愕という感情が浮き出たがそんなことはどうでもいい。
人間らしくない自分と、合理的すぎる考え-それもサイコパスなどの精神異常者の考えに近い思考回路を持つ魔導人形兼賢者-どんな組み合わせだ、と思わず笑う。
優夢
優夢
何でもないよ…
ルアリー
ルアリー
そう?
ま、まぁ疲れてるんなら今日も早めに切り上げて、残りの時間は体力回復に費やそうか
ルアリーがそう言う頃には既に自室のベッドの上にいた。
私は疲れが溜まっていたのか、現実世界に戻ってから僅か数分で眠ってしまった。
人間が5分などの数分で眠る時は気絶も同然、意識を失うようにして眠っていると以前本かなにかで見かけたにも関わらず-やはり眠気には勝てないと、翌朝になってそう思うのだった。
to be continued

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