家に帰ってから、優夢はルアリーに今日あったことを話した。
優夢はふと思い出した。
あなたが言っていたことだ。
たった今、ふと疑問に思ってしまったのだ。
あなたは何故夢をすり替えたということを把握、理解したのか。
ルアリーは「え?それ不味くね?」なんて思いながら優夢の話を聞いていた。
生き残りの魔導人形-それがボクで、その正体を探られたら終わりだ。
あなたって子には悪いが-記憶の改竄をいつかさせてもらう。
優夢には勿論黙るつもりだ。
優夢は優しいからそんなことやめてあげようって止めるに違いないからね。
心から安心したような表情をする優夢に対しルアリーは苦い表情をしていた。
さっきまで考えていた記憶の改竄ってのは-実は結構難しいことで、決して誰もができる訳じゃあない。
当然、ボクは自分の正体を探られたくないが故に血の滲むような努力の末改竄する術を扱えるようになったのだが。
あなたって子がどんな子かもボクは知らない-というか会ったことすらない。
まず、今日この時に初めて聞いたようなもんだ、無理もないだろう。
-22時47分
今夜は早めに始めよう、とルアリーは優夢に言った。
優夢は疑うことなく頷き、早速あの宝石の美しい幻想的な回廊へ向かった。
優夢は決意を固めると精神を統一させた。
移動して2分、ルアリーはいきなり柚音を回廊へ運んできた。
優夢は夢を送り込む。
夢に込められた思いを一欠片も残さず、完全に送り込む。
柚音に無事良い夢を送り終わると次の人を呼んだ。
次はかなり窶れた様子の少年だった。
さっきまで魘されていたのだろうか-意識こそないものの、その表情はどこか苦しそうだった。
4人目にして早くもコツを掴めてきた。
コツは意識を失った-『対象者』と軽くシンクロすること。
意識下にある無意識-そこに少し自分の意識を潜らせる。
段々と、その感覚が掴めるようになってきた。
そう言いながら人形が浮かべられないような不敵な笑みを浮かべた彼を見て、合理的で非道、その言葉が相応しいと思った。
これを拾った日、つまり昨日。私はこいつを殺しておくべきだった。
人を扱き使っているという考えはない、今のルアリーの言動からはそう推測できないこともない。
何故なら彼はそんなことを一言も言っていないから。
私は-たとえ死んだ人が私にとってどうでもよかったとしても、死因によっては気の毒に思うことだってあるだろう…。
-自覚なし、か。
驚愕という感情が浮き出たがそんなことはどうでもいい。
人間らしくない自分と、合理的すぎる考え-それもサイコパスなどの精神異常者の考えに近い思考回路を持つ魔導人形兼賢者-どんな組み合わせだ、と思わず笑う。
ルアリーがそう言う頃には既に自室のベッドの上にいた。
私は疲れが溜まっていたのか、現実世界に戻ってから僅か数分で眠ってしまった。
人間が5分などの数分で眠る時は気絶も同然、意識を失うようにして眠っていると以前本かなにかで見かけたにも関わらず-やはり眠気には勝てないと、翌朝になってそう思うのだった。
to be continued
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。