通学路を白い息を吐きながら歩いていると、ユーリアがそう聞いてきた。まさかとは思うがこの少女、いや賢者は学校に行ったことがないのだろうか。
あれ?ユーリアって案外ぐうたらな人?
今朝の夢にしても、今にしても彼女はどこか滅茶苦茶な理論、言い分を展開している。本当に彼女は、私は生命魔法なんて立派な魔法の理論を確立させたのだろうか?それすらも疑わしくなってくる。
たった1年半でそれまで世界になかった概念を病床の少女が、自分が生き永らえたいが為に編み出した。たしかにそれは驚くべき事実だろう-と、『心の中』でユーリア-もうひとりの私と会話している間に学校に着いていた。今日はやけに到着が早いな、と思ったが無理もないだろう。何せ-彼女と私は家を出てからずっと喋っていたようなものだから。
授業中、ずっとユーリアはそんなことを言っていた。
じゃあ、あなたはすべて解けるの?と聞くと勿論、と自信満々に言うから一応ユーリアにすべて答えを聞きながら問題を解いたりしたのだが-なんとすべて正解していた。見た目はほとんど変わらないのに、中身のスペックはこうも変わるのかと思ったりもしたが-不思議と悔しくはなかった。
虐められることは無くなったが未だにあまり良い扱いをされていない私はクラスの中じゃ【最下層】に当たる所謂陰キャという所なのだろう。
あぁ、それが私の当たり前だけど?
馬鹿にされるのかと思い、ついそう強く言ってしまった。自分の前世に馬鹿にされるのを恐れるなんて、それこそ馬鹿だとも思ったがユーリアは馬鹿にすることなく、私を驚かせた。
………そういう訳じゃない。そういう訳には行かない。
今の人間は魔法なんて絵空事だと思っているから。
そんなこと言ってしまえば、それこそ馬鹿にされ-
気づいた頃には遅かった。
昼休み、1人で居た奴がいきなり怒鳴ったのだ、無理もない。その時教室にいた生徒の視線はすべて優夢に注がれた。
優夢はもしかして今、人生でかなり『やばい』ミスをしたのでは、と焦った。そう、忘れてはならない-ユーリアはあくまで『わたし』。そして、魂だけなのだ。他の人はそれを知らない。ましてや、ユーリアを認識することすら出来ない。
その瞬間、ぶわっと風が吹く。
体が勝手に動き気づいた頃には-影で私のことを嘲笑ったクラスメイトが吹き飛ばされていた。
-ユーリア。どういうつもり?
-嘘だろ……。
笈原優夢14歳、前世の自分に「今のあたしがこんなんだとは思ってなかったからね!」と言われた挙句学校生活内ではどうやら精神を入れ替えられる上に体の自由-主導権を奪わられるようです。
あぁ………流石に卒業式ぐらいは-
あ、はい。どうやら前世の自分に私は監視下に置かれたようです。一言で言うとオワタ。マジオワタ。
その内サン●リというカップリングが人気で今年遂に公式日本語版が出たUnde⚪︎ta⚪︎eの主人公みたいになりそうだ…。いや、主人公ちゃんは好きだけどね、うん。
授業の予鈴が鳴ると同時にユーリアはそう言った。
優夢は明日からはこの学校で優夢として居られなくなる。それがどれだけ不安なことか。
その不安が大きすぎたのか、昼からの授業は全く頭に入ってこなかった。
to be continued
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。