午後11時-
ルアリエと優夢はあの幻想的な回廊に来ていた。
そう言うルアリエに、優夢は頷く。
『夢の操り手』としての記憶が、最近少しずつ夜眠っている時に明らかになってきたのだ。それらが本当ならば、『夢の操り手』は1度だけ広範囲にわたって悪夢の解放と良夢の加護をすることが出来るはずだ。しかし、それをする為にはかなりの魔力を必要とするらしい。だから、優夢はここについてよく知るルアリエに聞いたのだった。
ルアリエは奥義という言葉で何をするのかすぐにわかったらしい。
すぐに悪夢にうなされてる人をたくさん連れてくると言いルアリエは消えてしまった。
私がここに初めて来てから2ヶ月が経つ。
最近はあまりここに来られなかった。
でも、今日またここでアレを使えばまたここに来る日は遠のくのだろう。
私は他人に迷惑ばかりかけてしまっているような気がする。
最近まで独りで生きてきたと思っていたのに、ルアリエやユーリアと暮らしてから独りじゃ生きていけないんだと思い知らされた。
私はこれ以上私のせいで何かを失いたくないのに、また何かを失ってしまいそうになる。
これ以上私から何かを失えば-私はこの世に居られるのだろうか?
ルアリエに弱いところはあまり見せられない。
いつもの雰囲気を直ちに装うとルアリエが連れてきた人の悪夢を解放し夢をすり替えた。
それが終わった途端、急に立てなくなり私は膝をついた。
息が苦しい。何が起こっているの?
『夢の操り手』も一応魔法使いなのか。
そう、朦朧とする意識の中聞こえてくるルアリエの声に私は反応する。
立つこともままならない私をルアリエはおぶってくれた。ルアリエの背中は、人形の時とは全く違う温かさがあった。
-そうか。
でも、その理由が何であろうときっと私なら嬉しく思うのだろう。そう思いながら、私は眠ってしまった。
to be continued
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。