翌日は休日ということもあり、たっぷり昼まで寝過ごして体力の回復に専念した。
その次の日は終業式で、やっと2学期が終わったんだなと思わせられた。通知表はオール5だった。
夏夢に今日は一緒に帰ろうと誘われた。断る理由なんてない。私は帰路をともにした。
暗い表情で言う夏夢に優夢は察した。
夏夢との間では、ユーリアは私の従姉妹ということになっている。そうしておいた方が色々と楽だからだ。
……そして髪色や目の色からヨーロッパ住まいという設定にしてある。まぁ彼女、ユーリアはヨーロッパ(ポーランド)出身らしいから別に間違ってはいないのだが…。
数分坂道を歩くと変わりない私の家が見えてきた。
玄関を開けると2階から何やら2人の怒声が聞こえる。
優夢がそう言うのも無理はない。
賢者と呼ばれているような人達がポテチ片手にどっちが1番美味しいかなんていう、まるで小学生がやりそうな言い争いをしていたのだ。
そしてそれは飛び火となって優夢を襲う。
どうしよう、ここはどちらかに合わせるべきなのか。
それとも私自身の好みを言うべきなのか。
-そんなの選ぶまでもないだろう。
何故か2人とも瀕死のダメージを食らったような話し方に変わり、私は困惑するしかなかった。
だが、空腹に限界を感じがっくりと項垂れた賢者2人を放置、ひとりキッチンへと向かった。
なんて呑気に話していると、キッチンからバターのいい匂いが漂う。
2人はその匂いにつられかけたがあくまでも食べるのは優夢であって自分たちではないということを思い出すと再び雑談を始めた。
あのバターの匂いからガーリックライスが出てくるのかという賢者2人の心のツッコミは優夢には届くことなく、優夢は作りたてのガーリックライスを頬張る。
賢者2人がそのガーリックライスの出来に目を奪われたと勘違いしたのか、優夢は2人に食べる?と言わんばかりにガーリックライスを取ったスプーンを差し出す。
そう言われルアリエは仕方なく先に一口もらうことにした。どちらかと言えば、ユーリアが口をつけてからの方が幼馴染ということもあり気が楽だったのだが。
その後3人はゲームしたり本を読んだりと、家族のように過ごした。
優夢はいつまでもこの時が続けばいいと思った。
素直になれない、可愛らしい自分の前世とは打ち解け、自分がまだ赤ん坊だった頃から色々と見守ってくれた父のような優しい賢者とは本当に親しくなった。
まぁ一応元々2人が快諾してくれることは予想はついていた。だから今、優夢の手元には株投資で大成功して手に入れた、既に円に換えた札束がある。
ただユーリアの気分次第では大変なことになりそうだ-…
to be continued
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!