私は迷いがない声でそう言った。
大貴 「あなたちゃんなら、そうだと思った!」
大ちゃんは笑顔でそう言ってくれた。
……けどどうしてか、心の底から笑っているようには見えなかった。
なんでそう見えるのかは自分でも分からなかったが、何故かそう感じた。
また、気を使わせてしまったのだろうか。
気を付けなくちゃ。
あなた 「うん、私は今でも涼介のことが好き。
……けど、これからどうしたらいいのか、分からない。」
大貴 「別れては、ないんだよね」
あなた 「うん」
今考えたら不思議だ。
「連絡してくんな」とは言ったのに、「別れて」は言われていない。
ウザイとか言われるなら、いっそのこと別れた方が良かったのかもしれない。
そっちの方がこんなに悩む事もなかったはずだ。
こんなに苦しい思いをするなら、はじめからさよならをしていた方が────。
大貴 「あなたちゃん!!!」
はっ────。
大貴「どうしたの!?具合でも悪い!?」
大ちゃんは必死な顔になって聞いてくれた。
あなた 「ううんっ。どこも悪くないよ!……ちょっと考え事をしていただけだよ。」
大貴 「そっか、なら良かった!」
……まただ……。
...また大ちゃんに気を使わせてしまった。
……なんで私はいつもこうなんだろう。
大貴 「あなたちゃん」
今度は、静かな声で名前を呼んでくれた大ちゃん。
あなた 「ん?どうしたの?」
大貴 「お願いだから、無理して笑わないで。」
あなた 「えっ?」
思わず聞き返してしまった。
あまりにビックリしたからだ。
大貴 「...バレバレだよ、あなたちゃん...」
はじめは自分では気付かなかったけど、私は無理をして笑っていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。