杏里を追い払った後。
追い払ったは、言い方悪いかな?でもいいや。
事実だし。
すぐに担任が来た。
クラス皆がざわつく。
男ですか?女ですか?なんて質問してる人もいる。
ざわつきが収まらないまま転校生らしき人が
教室に入ってきた。
その瞬間、空気ががらりと変わった。
入ってきた人は……。中々のイケメンだった。
先程まで騒がしかった教室は一斉に静まった。
教室の空気が息苦しいと言うように、少し顔を
歪ませた転校生は雪のように冷ややかで柔らかい声で
と言った。
担任がぼそりと瞬に呟く。
瞬はこくりとうなずいて、こちらにやってくる。
私の隣の空席にどかりと座り込む。
すると視線がこちらに集まる。
半分は、羨ましいという視線。
もう半分は……。なんであいつがという視線。
しょうがないじゃん。
私がここに来いって言ったわけでもないんだし。
心の中で必死に言い訳をするが聞こえるわけもなく。
とりあえず、気にしない事にして瞬に挨拶をする。
"いつもの私"を心がける。
明るくて、男子と仲が良いけどサッパリしている私を。
うまく笑えてるかな……?と不安になる。
瞬は、ずっと無言だ。
なんか反応してよー。と言おうと思った。その時。
なんの事だか全く分からなくて、考え込んでいると
おかしなやつ。と言い、雪がとけるように笑った。
私も、心から微笑んだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。