もう放課後。
1日が過ぎるのが早くて私は
いつも、今日に置いていかれる。
放課後は……。そうだ。
神崎くんに学校を案内しなきゃ。
私が、案内している間は終始無言。
ぺちゃくちゃと話されるのも困るし、
これで十分。
本当は、ここで案内は終わりだけど……。
お気に入りの場所につれていってあげよう。
聞きたいこともあるし。
階段をどんどんのぼる。
着いた。ベストタイミング。
屋上には、夕焼けが広がる。
オレンジ色に染まった空に、
いくつか浮かぶ、紫色の雲。
影が長く伸びて、屋上の下は暗い。
この時間、皆は部活してるから
帰宅部しか見られないって事。
私は、この景色が好き。
……どこよりも。
辺り1面オレンジ色に染められて、
神崎くんの顔がよく見えない。
無言で夕焼けを見つめている。
こちらを見て、ふっと
呆れたように笑う。
ポリポリと頭をかく。
そうして困ったように、
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。