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第2話

赤の魔術師 山田涼介
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2017/11/05 15:16
ザーッ
聞き覚えのある波の音、、
私は、長い眠りから目覚めたように、ゆっくりと目を開けた。
寝ぼけたまま、ゆっくりと体を起こすと、辺りを見回して私は声にならない悲鳴をあげた。
そこは、私が寝ていたベッド以外、何も置かれていなかった。
しかも、床も壁も天井もコンクリート。
まるで、倉庫のようだ。
そこで私は、ある記憶を思い出した。
「これからよろしく。俺たちのエンジェルちゃん?」
思い出した瞬間、この言葉は私の胸から離れなくなっていた。
エンジェルって何?
ここ、どこなの?
ねぇ、あの人たちは誰なの?
誰も答えてくれない疑問をただひたすら自分に投げかけていた。
すると、今まで静寂に包まれていた建物の中が一気に騒がしくなる。
女2「どうゆうこと!?急に出て行けって!!」
??「どうもこうもない。言葉の通り、出て行けっつってんの。」
怒りに満ちた女の声と、静かな男性の声が聞こえてくる。
女2「意味がわからない。そっちが勝手に拉致ったんじゃん」
??「あー、そうだよ。こっちはちゃんと目的があるんだ。
お前は俺らのエンジェルちゃん。
でも終わり。用済みはもう要らないの。」
女2「用済みって、、、」
??「分かったら、出てって。」
女はハイヒールの音を響かせながら、ドアを開けた。
??「あー、そうだ。言っとかなきゃいけねーことあったわ。」
女2「何?」
??「俺らのこと、誰かに喋ったら、タダじゃおかねーから。
お前なら、この意味分かるよな?」
女2「、、、はい。」
その瞬間、ドアが開いた音がして、ハイヒールの音は、遠くへ消えていった。
私は、今の2人の会話で大体のことは、理解できた気がする。
とりあえず確実に分かったことは
【あの人たちは、本当に恐ろしい人たちなんだ。】
ってこと。
バタン!!
ドアが開く音。しかも、この部屋。
私の目は、瞬間的にドアの方向に向いていた。
??「チッ、やっと起きた。そんなに電気強くなかったんだけどな、、」
そこにいたのは、
私の胸から離れなくなっているあの言葉を撃ち放った
あの、山田という人だった。
私が恐怖で怯えていると
山田「お前、名前は?」
あなた「、、、藤原あなたです。」
山田「ふーん。あなたか。」
山田「俺、山田涼介」
思ったより、丁寧な自己紹介にびっくりした私は、
ゆっくりと顔を上げて、山田さんを見た。
そこにいたのは、びっくりするほどの美顔だった。
私をじっと見てくるその瞳に、一瞬で吸い込まれそうになった。
彼が立ち上がると、私は、ズボンのベルトを巻くスペースに目をやった。

そこには、赤いバンダナがひとつの穴に通され、彼が動くたびにひらひらと揺れていた。
山田「はい、これ朝飯。」
あなた「あ、ありがとうございます。」
思わぬ食事を受け取ったところで、私は、ずっと心にしまいこんでいた質問を投げかけた。
あなた「あの、ここってどこですか?」
山田「ここ?あなたが、昨日いた倉庫の中。」
あなた「なんで私のこと、、」
山田「拉致ったかって?」
私は、コクッと頷いた。
山田「それは、新しいエンジェルちゃんを探してたから。」
あなた「あの、エンジェルちゃんってなんですか?」
山田「、、俺らの欲望を全部叶えてくれる奴らのこと。
お前だって、その1人なんだからな。」
急に目つきがキツくなった山田さんに私は慌てて目をそらした。
それを見た山田さんは、
山田「お前にこれだけいっておく。」
山田「お前は、俺らのエンジェルちゃんだから、頼まれたこと拒否するのとかありえないからな。」
山田「あー、後俺らに黙って、こっから逃げたり、
用済みって言われて、ここを出ていった後俺らのこと誰かに話したりしたら」
バンッ
山田「お前のことソッコー殺すから。」
タンタンタン、バタン
私は一瞬の出来事に言葉を失った。
そっと下の方を見ると、そこには
激しい音とともに、床に突き刺さった、ナイフ。
それはまるで、山田さんの本心の表れのようだった
普段は、比較的優しい好青年。
でも、ひとつパズルを組み間違えると
一瞬で裏切り者を切り捨てに行く殺人鬼。
一瞬で感情を変える。
そう。彼はまさに。“赤の魔術師”

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