心臓がドキドキする。
顔周りはとても熱い。
手は多分、思い切り汗をかいている。
「さ…さと…く、ん……?」
つっかえながらも名前を呼ぶと、私を抱きしめる腕の力はより強まる。
体感的には2,3時間、実質3分程度の時間、ずっとこうしている。
その間佐藤くんは、ずっと無言だ。
背後から抱きしめられているので表情も見えず、正直気まず過ぎる。
息をするのも辛い。
私の心臓の音、聞こえてないかな…?
緊張しっぱなしの私の身体が開放されたのは、それから少ししてのことだった。
いきなり佐藤くんは
「よし、じゃあもう行こうか」
と言うなりすんなり放してくれた。
なんだか色々腑に落ちないけど、ただ
寿命が2年くらい縮んだ気がする。
でも、それとは裏腹に元気がでた気がする。
「しつれいしまーす、お疲れ様でーす」
「しっつれいしまーす!」
本日2度目の放送室挨拶。
佐藤くんはとても元気良かった
「あっ!来たー!二人とも!あなたちん、大丈夫?無理してない?」
「うん、大丈夫、ありがと。佐藤くん慰めてくれたしね。」
そうにこ、と笑うとゆめちゃんも安心してくれた。
「それじゃあ!皆揃ったので…球技祭お疲れ様でーーーす!!かんぱーい!!」
「えっ早い!!」
「まだジュースついでないですよ部長!」
いつもと全く変わらずぐだくだだった。
少し落ち着いた時、ススス…とゆめちゃんが私の方へ来る。
「あなたちん…やっぱさっきのって先輩関連…?」
ゆめちゃんに嘘はつけない。
「……うん、そう。吹っ切れたと思ったんだけどなぁ」
はは、と乾いた笑いをすると、ゆめちゃんは心配そうな顔をする。
「…大丈夫だよゆめちゃん。私、そんなメンタル弱くないし、今はもうどうしようも出来ないって分かってるから。…ほとほりが冷めるまでの辛抱だから。」
そこまでいうとゆめちゃんは私に思い切り抱きついた。
「ふぉおおおおおおぉぉおあなたちん私と結婚してーーーーーーーもういいよもう私と結婚しよ?マサチューセッツ州行こう?ハーバード大学目指そう?」
いや、無理がある。
「えっ部長そんな趣味だったんですか?!」
「お……応援してます…」
待って
真に受けないで?!
またてんやわんやしてきた………
もはやテンションが宴並みに絶頂になっていく。
「も、もう既に帰りたあぁい………」
「今夜は返さないぜ!!」
マジでやめてください。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。