「じゃあ練習再開するかぁ…。」
うらたくんが疲れたような声で言った。
みんなも疲れてそう。
大丈夫かな…心配だな…。
なんか私に出来ること考えてみようっと。
「よし、…最初から通して見るか…。」
志麻くんが呟いた。
じゃあ講堂借りなきゃだよね。
鍵を取りに行くか〜…。
「ちょっと鍵取ってきまぁす〜」
そう言って私は部室をあとにした。
もう菜ノ香先輩に会いたくない…。
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私は無事に職員室で講堂の鍵を手に入れた。
急いで部室に戻ろうとしたんだけど…。
また騒がしい声が聞こえてきた。
「あッ!あなたちゃんじゃない?!」
えっ、私ですか?!誰?!
…クラスの軽音部ファンたち…?
「えーっと…どうしたの?」
私は尋ねてみた。
「あのね…軽音部のみんなって…、
どこに居る…?」
えっ、これって…どうしたらいいの…
「多分…部室だと思うけど…。」
言っちゃったけど大丈夫かな…。
みんなごめんなさい!!
「分かった!ありがと〜♪」
みんなは部室の方向へ向かっていった。
どうしよう…。みんな疲れてるのに…。
私は別の階段から部室に大急ぎで向かった。
息が上がる…。でも早くしないとッ!!
「「「キャアアッ!!!!」」」
ドアの前で黄色い声援が聞こえる。
あ、ちょっと遅かったかも…。
みんなほんとにごめんなさい!!
私は逆方向のドアから部室に入る。
みんなはサインとか写真とかを求めてるみたい…。
あぁ、どうしよう。
「サイン?まぁ…ええよ。」
センラくんは笑顔で対応してる。
でもあの笑顔は絶対嘘の顔だよ…。
私が困っていると坂田くんが気づいたみたい。
「あれ、…あなた戻ってたの?」
「う、うん…。」
「あ、あなた。」
志麻くんも気づいてくれた。
「あ、マネージャー来たから、
ここまでなぁ?」
センラくんがファンサを終わりにした。
「えっ、あなたちゃん…。」
ファンのみんなが私を冷たい目線で見てきた…。
私は思わず俯いた。
すると…、背後から抱きしめられた。
「あなた。はよ講堂行こか?」
えっ、センラくん…?
そんな声で囁かないで…。
私は頷くしか出来なかった。
「みんなごめんなぁ。でも…、
センラはマネージャーが1番大事やから。」
センラくんはそうみんなに謝っていた。
そんなこと言われたら嬉し過ぎるよ…。
みんなは不満げに戻って行った。
「みんなごめんね。折角練習するところだったのに…。」
「大丈夫だよ。あなたは悪くない。」
そう言ってうらたくんが頭を撫でてくれた。
「ありがとう…。」
…ってまだセンラくんは私を抱きしめてる。
「センラくん…。私もう大丈夫だから…。」
「センラがこうしてたいの〜…」
何そのあまえ方…。
可愛すぎる…。
「鍵取ってきてくれてありがとうな。」
坂田くんが私の頬に手を伸ばして微笑んだ。
ちょっと…顔が赤くなるのが自分で分かるよ…。
「大丈夫?熱ない…?」
今度は志麻くんが私の額と自分の額をくっつけた。
「全然…大丈夫だから…ッ…!!」
「確かに赤い…ほんとに平気?」
うらたくんが顔を近づけてきた。
「ほんとに大丈夫だから…!」
「じゃあ…講堂行こか…?」
センラくんは離れる気ゼロですね。
顔が赤い原因は貴方達ですからね…。
〜おまけ〜
さっきの私の状況まとめ。
背後からセンラくんに抱きしめられている。
坂田くんが天使の微笑みで頬に手を伸ばしてくる。
志麻くんが私と自分の額をくっつける。
うらたくんが顔を近づけてくる。(距離感5cmほど…)
これは死にます。
こんなイケメン達に囲まれるとか…。
女子に嫌われるのも当たり前ですよね…。
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今回も長くなってしまいました。
楽しかったです。
次回もお楽しみください。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。