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第1話

幸せ
春の暖かな陽射しを浴びながら、私ーあなたーはう~、と伸びをする。
寒い冬が終わり、桜の蕾もすでに桃色の花を咲かせていた。
この制服を着て春を迎えるのは二回目になる。
あの頃の私は右も左も分からないことだらけだったが、私の隣で苦笑いを浮かべている親友ールリーのお陰で、今も笑うことができている。
「あ~お腹一杯…眠い」
お弁当を食べ終わった私が大きく伸びをしながら言うと、ルリも私と同じように伸びをしながら相槌を打つ。
「春は暖かいからね~この前まで雪降ってたのが嘘みたい」
あ、と言ってルリは私の髪に手を伸ばす。
微笑みながら見せたルリの指の先には、頭上の枝についている桃色の花と、同じ色をした花びらが挟まれていた。
「ふふ、ついてたよ」
「あ、ありがとう…」
少し恥じらいを感じながら返事をする私の様子がおかしかったのか、口を手で隠しながら笑うルリの姿に、私もつられて笑う。
二年生になってクラスは別れてしまったけれど、私たちは毎日一緒にお昼を食べていた。
学年が上がったとたんに難しくなった勉強や、複雑な人間関係を唯一忘れられるこの時間を、私たちはとても大事にしていた。
サワサワと春風が芝生達を優しく撫でる。
私は春風の音を聴きながら、ゆっくりと目を閉じた。

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一月かのん
入賞者バッジ
一月かのん
主にホラー系などの小説を扱っております。 カゲロウプロジェクト・黒子のバスケ・文豪ストレイドッグス・ナカノヒトゲノム・鬼灯の冷徹が好きです。 『君との思い出をこの手に乗せて、』、『願い事叶え屋さん』、『いつも通りの帰り道』、『おはよう、初めまして。』 この4作品は完結済みです。 もしお時間がございましたら、ご観覧していただけると嬉しいです。 追記 『願い事叶え屋さん』を第3回プリコンのホラー賞で入賞させていただきました。 皆様、本当にありがとうございました。
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