プリ小説

第2話

幸せ
「…ルリ?」
私が声を掛けるとルリはビクッとしてこちらを振り向いた。
「あ…ごめん、あなたちゃん。えと、それで、なんの話だっけ?」
「え?いや…なんでもない。」
「そっか」
しいん、と私たちの間に沈黙が訪れる。
あんなに綺麗だった桃色の桜は、今は鮮やかな緑の葉を付けている。
春の暖かな陽射しも、気持ちよかった春風も、全て雨を含んでジメジメした、まさに梅雨のものに変わってしまっている。
だからだろうか。
なんだか最近ルリはボーッとしていることが多い。
何か悩みでもあるのだろうか。
だとしたら…
「…相談してくれたっていいのに」
「え?」
「あ、いやっ!なんでもない!」
危ない危ない。
いつのまにか口に出してしまった。
幸い声が小さかったらしく、ルリには聞こえていなかったようだ。
でも、やっぱり話してもらえないのは少しさびしい。
そんな思いを乗せて大きくため息を吐くと、私の思いを感じ取ってくれたのか、ルリがゆっくりと口を開いた。
「…私ね、好きな人がいるんだ」
「え!?」
予想外の答えに一瞬思考がフリーズする。
そんな私の様子に少し戸惑った表情を見せながらも、ルリは続ける。
「同じクラスの人なんだけどね、彼すごい人気者なの。毎日誰かしら囲まれてて。だから、私なんかが好きになっても…」
「叶うわけない、って?」
「うん…」
うつむきながら頷くルリの頬を、軽くつねる。
「ふぇ?ふぇ?あなたひゃん?」
「そんな弱気になっちゃダメだよルリ!」
目を白黒させながら状況を判断しようとしているルリに構わず続ける。
「その人のこと好きなんでしょ?だったら弱音なんか吐いてる暇あったらばんばん話しかけないと!」
「で、でも…」
「誰かに取られてもいいの!?」
「っ…それは…やだ…」
「だったら!」
ルリの両手を私の両手で包む。
「…やることは1つ、でしょ?」
ニヤッと笑った私を見て、ルリも微笑む。
「…っうん!」
繋いだ両手から伝わってくるルリの体温は、とても温かかった。





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一月かのん
入賞者バッジ
一月かのん
主にホラー系などの小説を扱っております。 カゲロウプロジェクト・黒子のバスケ・文豪ストレイドッグス・ナカノヒトゲノム・鬼灯の冷徹が好きです。 『君との思い出をこの手に乗せて、』、『願い事叶え屋さん』、『いつも通りの帰り道』、『おはよう、初めまして。』 この4作品は完結済みです。 もしお時間がございましたら、ご観覧していただけると嬉しいです。 追記 『願い事叶え屋さん』を第3回プリコンのホラー賞で入賞させていただきました。 皆様、本当にありがとうございました。