「ねぇ、さやちゃんどうしよう!聞いて!」
「ん?なに?」
さやちゃんは弓を弓立てに置きながら言った。
この子は紗耶佳(さやか)。中学校からの友達で、部活中はさやちゃんと一緒にいることが多い。
そんなさやちゃんに、私は昨日のことを一番に報告した。
「ねぇ、私ついに恋したかも!」
結構大きな声になってしまった。他の部員が見てきたが、興奮していた私は気付かなかった。
「ほー、そうなん。……え!?」
さやちゃんが時間差で驚いた。
そして「え?」を連発しながら聞いてくる。
「いつ?誰に?」
「昨日、ファリマの店員さんに!」
「ファリマの!?店員さんに!?」
そう繰り返してまた「え!?」と叫ぶさやちゃん。
そりゃびっくりするよね。だって、恋ができなくて困ってるって私この前言ったばっかりだもん。
「そこじゃねーだろ」
「え?」
後ろを振り返れば、そこには見慣れた顔があった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!