ファリマの来客メロディが三回連続で鳴り響く。
その三回は、私と、さやちゃんと、彩香の分だ。
「ねぇあなたちゃん、どれ?好きな人!」
「イケメンイケメンー」
「えっとねー……あれ?」
レジを見てから、きょろきょろと店内を見回す。
……いない。奈倉さんがいない!
「いない!」
「え?あー、今日は休みなのかな」
「まじかー。残念」
「ごめん二人とも……見せられなくて」
肩を落として二人に謝る。二人は全く怒らず、「ぜーんぜん!」「また明日見に来よー」と笑顔で励ましてくれた。
二人とも優しすぎ……ほんと感謝だ。
その時、彩香がある方向を見ながら言ってきた。
「ねー。あの人じゃないの?好きな人」
「えっ!?」
まさか奈倉さんが……!?
「いらっしゃいませー」
通路をモップがけする40代くらいの店員さんが、私達の視線に気付いて棒読みで喋った。
……誰だよ。
「?あなたちゃん何その顔……違った?」
「全ッ然違う。私が好きなのは奈倉綾斗さんっていうイケメンなの!笑顔がかわいい年上なの、あれは年上すぎでしょ!」
「ふーんー?」
「……あなたちゃん」
さやちゃんがすっと右手を上げて私の後ろを指した。
何!?今度はどんな偽物……!?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。