「……え」
「……あ……」
えぇと、とどうしていいかわからないような表情で立っていたのは――今日はいないと思っていた、奈倉さんだった。
………………!?!?
「…………」
「…………」
無言の見つめ合いが続く。こんな状況じゃなかったらどれだけのときめきがあっただろう。だが今は冷や汗しか出てこない。
「……あの、…………聞いてました?」
恐る恐る尋ねる。しばらく、奈倉さんは言葉を選んでいるような雰囲気を顔に滲ませ、そして言った。
「……僕と同姓同名の人を、好きな人だって言ってたのは……聞きました。すみません」
深々と頭を下げられた。
私の脳内火山が噴火した。
嘘だ……誰か夢だと言って。あ、でももしかしてギリバレてない……?同姓同名の別人って思ってる?
「いやバレてるでしょー。てゆーかあなたちゃん、それ全部声に出てるからねー?」
「え!?」
彩香に驚きの声を上げたのと同時、奈倉さんが気まずそうに固まった。
――本当(マジ)なんだ……。
「ああ、これで完璧にバレたね……どうするあなたちゃん」
「さやちゃん……ど、どうするって、どういう選択肢があるの?」
「告白するか、しないかー。こっちはちゃんとした方がいいと思うけどなー」
告 白 ! !
少女漫画の中でしか見たことない赤面必至のあれを、私がここでやるの……!?
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。