店内が静寂に満ちる。
鳴り止まない心臓。返事を待つ間が永遠にも感じて終わらないように思えたが、それは奈倉さんの口が開かれるまでだった。
「……こんな、誰とも知れない僕でいいなら……よろしくお願いします」
奈倉さんはぺこりと頭を下げた。
よろしく?オネガイシマス?
……OKってこと!?!?
「やったねあなたちゃん!!」
「おめでとー!」
さやちゃんと彩香が祝福のハグをしてきて、私も笑おうとしたが驚きの方が強かった。
「え?えっ?ほんとに?」
「本当ですよ」
にこ、と奈倉さんが優しく微笑む。
“本当にOKされたんだ”と実感して、私は嬉しさでいっぱいになった。
やったー!!え、どうしよう嬉しすぎる!
私、一生分の運を使い切ったんじゃない……!?
「……でも、あれだね」
「だねー」
「?どしたの二人とも」
「「いや……」」
明らかに歯切れの悪い否定。嘘なのは明白だった。
しかし、理由が私にわかるわけがない。気になるが、問い詰めるのも気が引ける。
まぁ大したことじゃないでしょ!
「そっか!」
私は満面の笑みでそう言った。
二人がぎこちなく笑い、何か意思疎通をするかのように目を合わせた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!