第16話

「俺のだ」
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2017/11/11 15:06
一週間が経った。

「じゃあねー!」

みんなからの「バイバイ」を受けて、あなたは更衣室を出る。

弓道場の下駄箱へ向かう途中で、大毅とすれ違った。

「ばいばーい!」

「おー、じゃな……」

そして下駄箱から瞬速で靴を出して履き、ドアの外から弓道場に一礼してコンビニへ一直線に駆け出す。

そんなあなたを大毅は謎に思っていた。

(最近やけに機嫌いいなあいつ……。部活後に何かあるのか?)

「あ、大毅……くん」

偶然通りかかった紗耶佳が、一度は目が合った大毅から気まずそうに視線を外す。

そのまま立ち去ろうとしたので、大毅は紗耶佳の腕を掴んでそれを止めた。

「なんだよ。言いたいことがあるなら言えよ」

「……何もない、よ」

「『言おうか言わまいか迷ってる』ことも言え」

紗耶佳が肩を揺らして反応した。つまり、言おうか言わまいか迷ってることはあるということだ。

「なんだよ」と再び大毅が問う。紗耶佳は視線をさまよわせ、最後まで迷ったが、自分が言うまで大毅は腕を離してくれないだろうと思い、ついに観念した。

「……あなたちゃん、彼氏ができたんだよ」

「…………は?」

信じられない発言に大毅は目を見開いた。

更に紗耶佳は言う。

「あなたちゃんこの前、好きな人できたって言ってたの憶(おぼ)えてる?ファリマの店員さん。あの人と付き合ってるんだよ、一週間前ぐらいからね」

これで全部、と紗耶佳は締めくくる。しかし、大毅は微塵も納得していなかった。

――あなたに何年も片想いしてて、いつか両想いにって思ってたのに……コンビニの店員なんかが横取りした?

「……サンキュ」

「あっ、うん。いえいえ」

大毅が怒りを見せなかったことに驚く紗耶佳だが、あまり長居して巻き込まれるのは嫌なので素早く退散した。

だから気付かなかった。大毅の瞳が鋭くなっていたことに。



「……あなたは、俺のだ」

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