その夜。
「……LIME聞いとけばよかった」
私は自分のバカさに呆れていた。
いくら綾斗さんとの時間が楽しかったからって、LIMEも電話番号も聞かないとかバカすぎる……。集合時間と場所だけ先に決めといて正解だった。
「何着て行こう……」
クローゼットを開けて――私は目を伏せた。
脳裏に嫌でも浮かぶ今日のこと。
相手は大毅なのに、いつもみたいに強気になれなかった。……なんでだろ。
あいつは幼稚園の頃から一緒の幼馴染みで、ムカつくけど嫌いじゃなくて……案外、私はあいつを大切に思ってるのかもしれない。
「そうだとしてもなぁあ……恋愛感情にはならないよねぇ」
ばふっ、と背中から勢いよくベッドにダイブする。
大毅はなんで私を好きになったんだろう……。
「……ごめん。綾斗さん」
謝ったところで聞こえるはずもないが、声に出すと少し心が軽くなった気がした。
「!」
ピコン、とLIMEの通知音が鳴った。
画面を覗けば、新規メッセージの通知が一件。
私は送り主の名前を見て目を見開いた。
「……大毅」
気になって、トークを開いた。
私は息を吸って、静かに吐いてから返信を打った。
すぐに既読がついて、返信が返ってくる。
……どう返せばいいの?
『ありがとう、でも私は綾斗さんが好きだからごめん』?いや言えないわ……このタイミングで言ったらダメだわ。
『うん。考えとくね』?……なんか上からじゃない?LIMEは表情見えないから誤解生みそう……。
迷っていると、トークに吹き出しが一つ増えた。
スマホをその辺に置いて、長いため息をつく。
告白してくれた人に気を遣わせて……ダメだな、私。
大毅を傷つけない答えを……ちゃんと考えないと。
「難しいなぁ……」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。