第31話

エピローグ その1 ①
520
2017/11/28 11:16
「えっ……お姉さんの試験!?送ってあげてたの!?」

「うん」

綾斗さんは苦笑して肯定した。

土曜日。

とあるショッピングモールの二階、本屋の近くに設置されたソファに座り、部活帰りの私と綾斗さんは話していた。

親には「部活終わったら友達と遊ぶ」と言ってあるので遅くなって問題なし。綾斗さんのバイトは午前で終わりだそうで、こちらも問題ないらしい。

そして、話は他愛ないものから、大毅とのこと、綾斗さんがデートに来れなかった理由へと移っていた。

――いや……来れなかったではなく、正確には“4時間半の大遅刻”だった。

「姉さんは保育士の資格取ろうとしてるんだけど、実技試験がちょうどデートの日だったんだ。朝起きたら急に『間に合わないから送って』って言われてさ。その時は8時だったし、試験が行われる場所まで片道30分くらいだったから間に合うと思ってOKしたんだけど……試験場所まであと少しってところで、道路が大渋滞して」

聞けば、その試験場所の近くで大きな祭りがあったらしい。人が多い上に車の往来を制限されてなかなか進めず、帰りも同様に時間がかかって、待ち合わせ場所に着いたのは午後3時。私が大毅と帰った後だったのだ。

私は心配になって尋ねた。

「お姉さん、試験に間に合ったの?」

「うん。というか姉さん、渋滞を予想してたみたい。試験始まるの午後からだった」

「え……」

「そうなるよね」

僕もなった、と綾斗さんが笑う。

……はい……開いた口が塞がりません。

ん?――ちょっと待って?

プリ小説オーディオドラマ