「……しないなら、僕からいくよ」
両の手首を一度に掴まれて、顔から剥がされると同時にぐいっと引き寄せられた。
唇に、綾斗さんのそれが重ねられた。
触れるだけのキス。かと思えば、角度を変えて再び強く重ねられた。繰り返される甘い口付けに、酸素が少しずつ足りなくなっていく。
何度目かわからないキスを終えて、ようやく綾斗さんはキスをやめてくれた。
「……上書き。大毅くんにあなたちゃんの初めては取られちゃったけど、これからは僕とだけ、ね」
至近距離で、綾斗さんが微笑んだ。
私はドキッとして、更に「ある期待」を抱いて胸がドキドキし始めた。
それ、って……。
「ヤキモチ?」
「……はい。あの時は何も言えなかったけど、妬いてました」
――か、かわいい……!ちょっと照れて目逸らすのかわいすぎる!てか本当にヤキモチだったんだ嬉しい……!!
「……ずっと自信なかった。僕があなたちゃんの彼氏でいていいのかなって。あなたちゃんはまだ高校一年生でいろんな人と出会うし、すごくいい人ともきっと会う。なのに縛っていいのか……迷ってたんだ」
ぽつりぽつりと綾斗さんが言った。
私は気持ちを切り替え、黙ってその話に耳を傾けた。
「でも、間違ってた。好きなら迷わずに言うべきだったんだよね。あなたちゃんは僕のだって、絶対譲らないって」
綾斗さんはそっと私の頬を両手で包んで、こつんと額を合わせてきた。
「これからも、僕の彼女でいてください」
……あー、言いたいこといっぱいあるはずなのに……ダメだ、一つも浮かばない。
――しょうがないから、全部放置して笑おう。
私は心の底から沸き上がる嬉しさを顔いっぱいに弾けさせた。
「こちらこそ、よろしくお願いします!」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。