昨日のことが頭から離れなかった。
『あいつ、とても不愉快だったなぁ』
そんな事を思いながら今日もいつもの場所に向かっていた。
あいつもいつも居るとか言ってたけど昨日あんな事あったから、今日はさすがにいないだろうと思っていたが.....
今日もあいつはいた。
やっぱりフードをかぶっていて、マスクをしているから顔は全然見えないが、昨日と同じ格好をしている。
鼻で笑われた。
またバカにされ不愉快になった。
『あぁ、来るんじゃなかった。』
と思ったが、やっぱりここからの景色を見るとそんな思いはなくなる。
それくらい綺麗だ。
急に普通の事を言われたので驚いた。
本当は言いたくなかったからだ。
でも.....
ぽつりと言った。
気づいたら止まらなくなっていた。
大粒の涙が頬を流れ落ちて来た。
すると、、
まさか、そんな優しい言葉をかけてくれるとは思って
なんだか、最初は嫌なやつだと思っていたが優しい面があると知った。
「俺がいるから」
「話し相手になってやる」
その言葉はどこにも居場所がなく、話す相手すらいない私にとっては絶大な効果があった。
それを聞いて、もっと泣いてしまった。
そう言って頭をポンっと触られた。
その手はとても優しく、柔らかい、私を包み込んでくれる手だった。
最初は大嫌いだったけど、今は1番の味方になった。
人を見る目ってそんなすぐに変わるものなのか...
多分、私はこんなに人に自分のことを話したのはこれが初めてだからかもしれない...。
いや、初めてではない。
1人を除いて、初めてだ。
そして、顔も名前もなにも知らない人が私の相談相手になった。
怪しいと思うけど、私の話を聞いてくれる人なら誰でもいいと思うほど寂しかったからだろう。
この人を信用していいかなど、どうでもいい。
とにかく私の味方がいるというだけで、とても嬉しかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!