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第3話

どこにも居場所がなかった...でも、、
27
2018/02/04 12:07
昨日のことが頭から離れなかった。


『あいつ、とても不愉快だったなぁ』


そんな事を思いながら今日もいつもの場所に向かっていた。




あいつもいつも居るとか言ってたけど昨日あんな事あったから、今日はさすがにいないだろうと思っていたが.....





男の人
なんだよ、またお前かよ。
今日もあいつはいた。

やっぱりフードをかぶっていて、マスクをしているから顔は全然見えないが、昨日と同じ格好をしている。
あなた

なんだよって、別に私が来るのは自由ですけど。

男の人
ふんっ。
鼻で笑われた。


またバカにされ不愉快になった。


『あぁ、来るんじゃなかった。』


と思ったが、やっぱりここからの景色を見るとそんな思いはなくなる。


それくらい綺麗だ。
男の人
綺麗だよな...ここの眺め。
あなた

そうですよね...。

急に普通の事を言われたので驚いた。
男の人
てかさ、昨日から気になってたんだけどさぁ
あなた

はい...

男の人
部活とかないの??
男の人
ほら、だって制服だから高校生?くらいでしょ?
男の人
俺らの時はさ、すごい部活三昧だったからさ、もしかして毎日ここに来てんの??
あなた

あなたに言う必要はありません...。

男の人
あっそ。じゃあいいけど。
本当は言いたくなかったからだ。



でも.....
あなた

辞めました。

ぽつりと言った。
男の人
え?なにが??
あなた

部活、前までテニス部だったんですけど、辞めたんです。

男の人
あっ、、そっか。まぁ最近練習とかきついって聞くしな。
あなた

まぁ、それもそうなんですけど...

あなた

正確には、部活に居場所がなかったからなんです。

あなた

部活だけじゃない...どこにも居場所ないから...

あなた

だから、ここが唯一の私の居場所なんです。

男の人
うん。なんかごめんな。重い話をさせちまって。
あなた

いえ、ここは幼い頃から私たちの居場所だったから...

あなた

ここの景色が綺麗と言って共感してくれるひとがいてとても嬉しかったです。

男の人
そっか。それは良かった。
あなた

私、人間関係がうまくいかなくて...

あなた

いつも、悪口とか陰口言われてるんじゃないかって怯えて、

あなた

人とうまく話せないんです。

男の人
じゃ、家族に...
あなた

家にも私の居場所はなくて...

あなた

私ちょっと変なのかな...?

気づいたら止まらなくなっていた。


大粒の涙が頬を流れ落ちて来た。



すると、、
男の人
そうか??昨日から俺とちゃんと話せてたじゃん。
男の人
俺はお前のことうるせぇと思ってたけど、
男の人
その分面白いやつだなと思ってたよ笑
男の人
話してて楽しかった。だから今日もここに来たら会えるかなって...
男の人
おまえの居場所はここだけでいいじゃん。1つでもあるって幸せだよ。
あなた

はい、、

まさか、そんな優しい言葉をかけてくれるとは思って
男の人
でも、1人じゃ寂しいじゃん。
そういう時は俺がいるから。
男の人
俺もここ気に入ったし。
男の人
話し相手になってやってもいいよ。
あなた

ありがとうございます...

なんだか、最初は嫌なやつだと思っていたが優しい面があると知った。



「俺がいるから」



「話し相手になってやる」





その言葉はどこにも居場所がなく、話す相手すらいない私にとっては絶大な効果があった。



それを聞いて、もっと泣いてしまった。
男の人
ごめん...俺ってなんでも思ったことすぐ言っちゃうからさ
あなた

いや、本当にとても嬉しいです。

男の人
それはよ良かった。
俺も嬉しいな。
そう言って頭をポンっと触られた。


その手はとても優しく、柔らかい、私を包み込んでくれる手だった。





最初は大嫌いだったけど、今は1番の味方になった。


人を見る目ってそんなすぐに変わるものなのか...



多分、私はこんなに人に自分のことを話したのはこれが初めてだからかもしれない...。


いや、初めてではない。



1人を除いて、初めてだ。






そして、顔も名前もなにも知らない人が私の相談相手になった。




怪しいと思うけど、私の話を聞いてくれる人なら誰でもいいと思うほど寂しかったからだろう。
この人を信用していいかなど、どうでもいい。


とにかく私の味方がいるというだけで、とても嬉しかった。

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