綺麗に伝う汗。
楽しそうな歌声。
ピタッとそろう踊り。
そしてなんと言ってもキラキラ輝く笑顔!
「…ふふ、ぐへへ〜!叶多くんかっこいい〜!!」
学校の放課後、自分の席で昨日の歌番組の動画を見ていると
『おいあなた。お前気持ち悪いほどにやけてんぞ』
と、私の前の席にドカっと座り、失礼なことを言ってくるこいつは奏汰(ソウタ)。
なんというか腐れ縁で中・高とずっと同じクラス。
「しょうがないじゃん。Princeがめっちゃカッコいいんだもん!」
そう言って私は動画を奏汰に見せつけた。
Princeというのは今一番人気の3人組アイドルグループ。
グループ最年少でかわいい容姿をもつ碧海(アオイ)くん。
頭が良くてクール系の優紀(ユキ)くん。
そして、いつも明るくて笑顔で、私が大好きな叶多(カナタ)くん。
3年前にデビューして以来、すごい人気なグループ。
私はデビュー時に叶多くんの笑顔に一目惚れしてからずっと好き。
ボソッ
『そんな奴のどこがいいんだよ…』
「ん?奏汰なんか言った?」
『…別に』
奏汰はいつも私が叶多くんの話をすると不機嫌になる。
なんでだろう。
ふと時計を見ると
「あぁ!!もうこんな時間!遅れちゃう!」
『え』
「これからバイトなの!じゃ!バイバイ奏汰!」
『ちょ、おい!』
私は急いで教室を出てバイトへ向かった。
『ま、まじかよ…くそ、今日も言えなかった…』
教室に残された奏汰は髪をぐしゃっとして、そう呟いた。
この日から私の人生が大きく変わることなんて思ってもみなかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。