第6話

イジワル。
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2017/11/03 17:44
「な、何を…」


言ってるんだ、秀也くんは。


「先輩照れてるっ」


ははっと笑いを漏らす秀也くん。


「て、照れてないしっ!

優しくもないよっ」


かぁぁっと顔が熱くなるのがわかる。


褒められ慣れてない私に優しいとか言わないでっ!


「えー、優しくなかったらこうやって、休日に、見知らぬ後輩の買い物に付き合いますー?」


「そ、そりゃぁ、お礼だし…見知らぬ後輩じゃないし…

第一、先に助けてくれたのは秀也くんじゃんっ。

それに、買い物って言っても妹への誕プレだし、秀也くんの方がよっぽど優しいよ。」


照れ隠しじゃない、ほんとにそう思う。


真顔で秀也くんの目を見て話す私は、秀也くんの顔が赤くなっているのに気づいた。


「秀也くん…?」


「あ、え、いや、先輩が…マジな顔で言うから…」


「ふふっ…」


あたふたしてる秀也くんに笑ってしまう。


あ、いいこと思いついた。


「秀也くん、照れてるっ」


私がそう言うと、秀也くんは目を丸くして驚いた。


でもそのあと私の真意に気づいたのか、私をキッと睨んで言った。


「先輩…仕返しですか…?」


赤い顔して睨まれましても…怖くないよ?


「へへっ、バレた?」


形勢逆転。


いやぁ、楽しい。


「照れ屋さんなんだね〜っ」


私がそう言うとさらに顔を赤くした。


さっきカッコイイって言った時も顔を真っ赤にして照れてた。


「ち、違いますよっ!

暑いだけですっ」


「えー、そぉ?

まだ4月だし、長袖でもちょっと肌寒くない?」


にやっと笑う私。


秀也くん、からかいがいがあるなぁ…!


「…先輩、イジワル。」


え、ちょ、まっ…、


か、かわいい!


伏し目がちに言う秀也くんに思わずキュンとしてしまった…。


「そ、そーだよ?

私意地悪な人だもんっ、知らなかった?」


「知りませんでしたっ!

第一印象は優しい人だったのに…」


はぁ、と秀也くんが肩を落とす。


「そこは今も優しいって言っとこーよっ!」


私がそう言って、ふたりで笑う。


あぁ、楽しいっ。


男子の前で思いっきり笑ったのなんて、いつぶり?


「もー、早く選んじゃおっ」


「ですねっ、あー…迷います…」


そしてまた私たちは、秀也くんの妹ちゃんへの誕プレを探すという、本来の目的に戻った。

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