「な、何を…」
言ってるんだ、秀也くんは。
「先輩照れてるっ」
ははっと笑いを漏らす秀也くん。
「て、照れてないしっ!
優しくもないよっ」
かぁぁっと顔が熱くなるのがわかる。
褒められ慣れてない私に優しいとか言わないでっ!
「えー、優しくなかったらこうやって、休日に、見知らぬ後輩の買い物に付き合いますー?」
「そ、そりゃぁ、お礼だし…見知らぬ後輩じゃないし…
第一、先に助けてくれたのは秀也くんじゃんっ。
それに、買い物って言っても妹への誕プレだし、秀也くんの方がよっぽど優しいよ。」
照れ隠しじゃない、ほんとにそう思う。
真顔で秀也くんの目を見て話す私は、秀也くんの顔が赤くなっているのに気づいた。
「秀也くん…?」
「あ、え、いや、先輩が…マジな顔で言うから…」
「ふふっ…」
あたふたしてる秀也くんに笑ってしまう。
あ、いいこと思いついた。
「秀也くん、照れてるっ」
私がそう言うと、秀也くんは目を丸くして驚いた。
でもそのあと私の真意に気づいたのか、私をキッと睨んで言った。
「先輩…仕返しですか…?」
赤い顔して睨まれましても…怖くないよ?
「へへっ、バレた?」
形勢逆転。
いやぁ、楽しい。
「照れ屋さんなんだね〜っ」
私がそう言うとさらに顔を赤くした。
さっきカッコイイって言った時も顔を真っ赤にして照れてた。
「ち、違いますよっ!
暑いだけですっ」
「えー、そぉ?
まだ4月だし、長袖でもちょっと肌寒くない?」
にやっと笑う私。
秀也くん、からかいがいがあるなぁ…!
「…先輩、イジワル。」
え、ちょ、まっ…、
か、かわいい!
伏し目がちに言う秀也くんに思わずキュンとしてしまった…。
「そ、そーだよ?
私意地悪な人だもんっ、知らなかった?」
「知りませんでしたっ!
第一印象は優しい人だったのに…」
はぁ、と秀也くんが肩を落とす。
「そこは今も優しいって言っとこーよっ!」
私がそう言って、ふたりで笑う。
あぁ、楽しいっ。
男子の前で思いっきり笑ったのなんて、いつぶり?
「もー、早く選んじゃおっ」
「ですねっ、あー…迷います…」
そしてまた私たちは、秀也くんの妹ちゃんへの誕プレを探すという、本来の目的に戻った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。