第11話

理想
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2017/11/06 09:17
「おーい、弥生とあなた!

これから新入生来るから、こっち来といて〜」


そう言いながら松尾涼(まつおりょう)先輩が顔を覗かせた。


「って、何二人でラブラブしてんだよっ

俺も混ぜろっ!」


そう言いながら両手を広げる松尾先輩。


「わーっ、松尾先輩!

大丈夫ですって!

やましいことは何も無いですっ!!!」


私は弥生先輩の腕の中で叫ぶ。


松尾先輩は弥生先輩の彼氏さん。


誤解が生まれてしまう!


って言っても女子同士だけど。


「分かってるよっ、バカかっ」


盛大に笑われてしまった。


「弥生、あんまりいじめんなよ?

オレの可愛い後輩ちゃんをっ!」


「はぁっ!?

いじめてないわっ!

可愛がってるのっ!

それに、涼の後輩じゃなくて、私のっ!」


…私、2人に冗談で取り合われてる…。


「おーい、いつまでそこにいんだよ…

って、涼までイチャついてんじゃねーよ…」


もう一人の男の人の声がする。


松尾先輩に隠れて顔が見えない。


でも、声で分かる。


だって、その人は…


中島先輩…。


「え!?

オレ何もしてないじゃん!?」


「じゃーその手はなんだ。」


松尾先輩の両手は弥生先輩を抱きしめようとしていた。


まだ、抱きしめてはいない。


「何もしてねーって!」


「うん、何もしてないよ?

涼は私に抱きつこーとしてただけ、まだセーフっ!」


「弥生っ!」


弥生先輩が笑いながら暴露したところで慌てる松尾先輩。


「はぁ、セーフじゃねぇよ…

何やってんだ、部活中にっ」


「すんませーんっ」


「涼、もう新入生来てるから、早くこいっ!

マネ二人もな!」


「は、はいっ!」


中島先輩が倉庫を出ていき、そのあとに続いて松尾先輩と弥生先輩も出ていく。


いいなぁ…。


松尾先輩と弥生先輩ってホントにお似合いの組み合わせだと思う。


凄い仲良し。


羨ましいなぁ…。


私も…いつか誰かと付き合って、お似合いとか言われる日が来るのかな…?


な、中島先輩と…なんてねっ…


自分で考えて照れる。


あ、私も早く行かなきゃっ。


そう思ったところで足が止まる。


ーふっ


えっ…。


今…


一瞬、


秀也くんの顔が思い浮かんだ。


…な、なんで!?

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