「あ、終わったー?」
体育館に入ると部員達はランニングをしていた。
「はいっ」
だいぶ時間かかっちゃった…。
夜の肝試しのための道具も運ばなきゃいけなかったからね。
ていうか、この部活どれだけ好きなのよ、肝試し。
毎年、このゴールデンウィーク合宿と夏休みの合宿、そして春休み中の合宿をしてるけど、毎回やるんだよね〜…。
驚かすのは立候補制、いなければくじ引き。
ここはマネージャーも平等に。
去年はくじ引きの結果、オバケ役だったんだよね〜。
オバケもオバケで怖いよ?
ひとりで待ってなきゃいけないんだから。
「じゃぁ、あなたちゃん、タイムマネジメントよろしく。
真白ちゃんはドリンクの準備。」
「「はいっ」」
今やってるのはコート外ランニングだから次は〜…
ストレッチ。
ピーッ。
タイマーが0を示したと同時に私は笛を鳴らす。
そして部員達は徐々に速度を緩めた。
ストレッチは花村先輩が中心となって進めてくれる。
「あ、」
忘れてた。
アイシングスプレー、カバンに入れっぱなし。
宿じゃんっ!
また取りに行かなきゃー…。
まぁ、ストレッチの時間ならいいかな…。
「花村先輩、アイシングスプレー取ってきますっ」
「りょーかいっ」
一応、1本はあるんだけど、予備は必要。
それに、合宿中。
大量に買っといた。
その大量のアイシングスプレーを抱えてまた体育館に戻る。
カゴとか持っときゃよかった…。
体育館に入ると、ほんの少し、3分くらいのの休憩に入っていた。
「あっ!」
簡易ベンチの上にスプレーを置いたら、一つがコロコロと転がってしまった。
私が拾おうとすると、スっと誰かの手が伸びてきて、スプレーを拾う。
「あ、」
顔を上げると、スプレーを手渡してくれる秀也くん。
また、助けてもらっちゃった。
「ありがと…」
「いえいえっ」
ニコッと笑う秀也くん。
その笑顔にドキッとする。
もう、何回秀也くんにドキッとさせられたんだろう。
近くにいるだけで苦しいよ。
秀也くんの優しさに触れるだけで、胸が痛くなる。
もう、3日間ずっと一緒にいたら心臓もたないかも…。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!