…な、なんかいる?
今は風も吹いてるわけでもなく、辺りは静まりかえっている。
そんな中、後ろから音がする。
何?
獣?
クマとかじゃないよね?
怖いよ…
…ほかのこと考えよ。
次の組は誰だろーな…。
私はまた道の方に向き直る。
ポンっ。
え。
肩に重みをかんじる。
なに…。
「呪ってやる…」
枯れた低い声。
「きゃっ…」
な、な、
振り向くと…
「きゃぁぁぁぁぁっ!!!」
目の前に明るく照らされた骸骨の顔。
それしか目に入らないくらい近い。
私は叫びながら後ずさりした。
でもしゃがんでるから上手く距離が取れない。
暗いっ、やだ…何っ!?
私は目を瞑った。
「先輩っ!!」
ガシッと肩を掴まれる。
ひっ…
「きゃ、」
「あなた先輩、目、開けてくださいっ。
オレですっ、秀也です!」
えっ…。
ゆっくりと目を開けると、暗いながらも秀也くんだと判別できた。
「すみません、そんなに驚くとは思ってなくて…」
「秀也くん…」
怖かったのと、安心したのと、もうよく分からないけど、涙が出てきた。
「先輩っ…泣かないでくださいよ〜
ほんと、ごめんなさい…」
「うぅーっ…」
ポンッと秀也くんの手が私の頭に触れる。
ドキッ。
そのまま優しく撫でてくれる秀也くん。
お陰で落ち着いてきた。
でもその反面、私の顔は熱く、鼓動が速い。
秀也くんに、頭撫でられてる…。
意識すると余計にドクン、ドクンと大きく波打つ。
周りに目を向けると、地面には懐中電灯とお面が落ちていた。
…なるほど。
「あ、ありがとう…」
私が秀也くんの方を向くと秀也くんはニコッと笑った。
「…秀也くん、なんでここに?」
「あぁ、先輩がなかなか戻ってこないから…」
やっぱり、もう終わってたんだ?
「橘先輩がオバケ役の人全員にLINEしたんですけど…
あなた先輩だけ戻ってこなかったんで、見に来ました。」
そっか…私、スマホ部屋に置きっぱなしだった…。
「ごめんね?
わざわざありがとう。」
「別に全然いーですよっ。
あ、もしもし、花村先輩?
あなた先輩、いました。」
…ご迷惑をおかけしました…。
「はい、じゃーまた。」
秀也くんが電話し終わり、こっちを振り向く。
「さ、戻りましょ?」
ドクンっ。
今なら…。
私は思った。
何故かわからないけど、ここしかない、今しかないって思った。
二人きり。
周りは静か。
告白するなら…今がチャンス。
「ま、待って!」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!