第28話

温かい気持ち
6,230
2017/11/13 06:37
「照れる…」


秀也くんがそっぽを向く。


「ふふっ。

なに、秀也くんかわいーっ」


私がそう言うとバッとこっちを向く。

「かわいい?」


あ。


秀也くんの顔が険しい。


「え、あ、えっとー…」


調子に乗りました、ごめんなさい。


「男子は可愛いって言われても嬉しくないですよーっ」


ぷくっとほっぺを膨らませる秀也くん。


あ、かわ…ん、んんっ。


口に出しそうになった言葉を咳払いでごまかす。


「先輩、思ったんですけど。」


「?」


「秀也くんって呼ぶのやめません?」


「え?」


秀也くんと呼ぶなと?


じゃあ私はなんと呼べば?


「もう今日から付き合うってことなんだし、呼び捨てにしません?」


「え。」


しゅ、秀也。


心の中で呼んでみる。


だ、ダメだ、恥ずかしすぎる。


「ね?

先輩、呼んでみて?」


うっ…


「いやぁ、秀也くんは秀也くんって感じなんだよねぇ…」


なんか、“くん”ってつけた方がしっくりくる。


私だけ?


「1回だけでいいから!」


ぐ…。


「しゅーやっ…。」


は、恥ずかしい。


ほんとに照れる。


秀也くんよりも呼ぶ方が照れる。


「…なんか、照れますね…」


「でしょー!?

やっぱ、秀也くんは秀也くんだよ。」


そう思うよ私は。


「まぁー、いっか、その内呼んでもらえれば。

いつかは呼び捨てしてくださいね?」


「へっ!?

い、いつかね…」


いつになることやら…。


「あ、じゃあ逆に。」


今度は私。


「敬語、2人でいる時なら使わなくていいよ?」


なんか、よそよそしくて。


「え、いいんですか?」


「うん。

てか、既に時々タメだよね。」


前から思ってたけど、秀也くん、私に対してタメ語使ってくる時ある。


まぁ、失礼とかは全然思わなかったけど。


「えっ。」


…自覚無しかい。


「それは…すみません。」


「だから、敬語じゃなくていいって〜」


「…分かった。」


わ、違和感!


「ふふっ」


心が温かくなる。


幸せってこういうことを言うのかな。


「先輩、こっち向いて。」


秀也くんに言われて顔を上げる。


「!」

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