第31話

好きな人?
5,964
2017/11/13 06:38
ロビーに戻ると少し不安げな顔をした秀也くんと目が合った。


優雨に連れられて奥に行ってしまったからだろう。


「大丈夫だよ」


口パクで秀也くんに伝える。


すると、秀也くんはニコッと笑って、ほかの部員達との会話に戻った。


…なんか秘密の恋っぽくて、胸がキュンとする。


自然とニヤける。


「あなた」


後ろから声をかけられ、振り返る。


「わ、中島先輩っ!

なんですか?」


明日の予定の確認かな?


「明日のスケジュールの事なんだけど…」


やっぱり!


私って冴えてる〜っ!


「はいっ、あ、弥生先輩と真白ちゃんも呼びますか?」


「あ、いや、もう2人には話してあって…」


あ、そっか…


私が戻るの遅くなっちゃったからいけないんだよね〜…


「すみません、私が早く戻ってこないばかりに…」


「え?

あぁ、大丈夫、気にしないで。

んで、…あ、やべ。

スケジュール表、部屋に置いてきちゃった。」


先輩がジャージのポケットを触る。


そういえば、私も部屋に置いてある。


「じゃぁ、部屋でやりますか?

そっちの方が静かですし…」


「あぁ、そーだな。」


私たちは部屋に向かった。


「んで、明日は主にドリブルとパスの練習だからここは、こーしてもらって…」


先輩に説明してもらったところをノートにメモる。


「分かりましたっ。」


「あのさ、あなたって好きなヤツとかいる?」


ドキッ。


え?


中島先輩?


「な、なんですか急にっ!」


ビックリしたぁ。


「いや、涼と弥生が付き合ってるだろ?

あなたもバスケ部内に好きな人いんのかなーと思って。」


…いますよ。


てか、今日が記念日になりました。


でもそんなこと言えないなぁ。


みんなのこと待たせて告白してたなんて…。


それに、中島先輩、別れてまだ1ヶ月。


なんか申し訳ない。


「いや、まぁ…」


濁してごまかす。


「オレさぁー、別れたんだよね、1ヶ月くらい前に。」


先輩が右手でペンを回しながら何気ない話のように言う。


「…」


なんて返したらいいのかわかんない。


「まぁ、知ってただろーけど。

だろ?」


「は、はい…。」


「はぁー、この部活、恋愛話には敏感すぎるよなー…

付き合っただの別れただの、話回るの早すぎ…」


…なんか、釘を刺されてるみたいで胸が詰まる。


「…恋愛禁止なんですか?」


「ははっ、いや、そーゆーわけじゃねぇよ?

ただ、オレが誰かと付き合いだしたらすぐに噂広まるんだろーなとか思っただけ。」


…もしかして先輩、好きな人でもできたのかな?


前の私なら、今の先輩の言葉にすごい不安になってただろーな。

プリ小説オーディオドラマ