第32話

思いがけない告白
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2017/11/13 06:38
今なら、相談に乗ろうくらいの余裕がある。


秀也くんとぶつかった偶然のおかげ。


秀也くんが日曜日に誘ってくれたおかげ。


秀也くんが私を好きになってくれたおかげ。


先輩への届かない想いを消してくれたのは全部秀也くん。


私が黙っていると、先輩が口を開いた。


「なぁ、付き合ってくれない?」


へ?


「…どこにですか?」


どっか行くのかな?


「はっ!?」


先輩は驚いたように目を見開き、くくっと笑った。


「な、なんで笑うんですかーっ!」


なんか、こんなに笑ってる中島先輩見るの初めてかも…。


「はははっ、違う違うっ!

あなた、ホント鈍感だな。」


「?」


「まぁ、そういうとこも好きだよ。」


「へっ!?」


肝試しの時から“好き”という言葉に敏感になってる。


後輩として、って意味だよね?


「あ、今心ん中で“後輩として”とか思ったろ?」


「えっ!?

やっぱ私、顔に出てます?」


なんかみんなにお見通しで悔しい。


「うん、書いてある。

言っとくけど、それ違うからな。」


「!?」


「恋愛対象として、好き。

なんか、マネの仕事一生懸命にやってるとことか、ちゃんと話聞くとことか、後輩への指導も丁寧だし、試合の時誰より声出して応援してくれるし、いつの間にか目で追うようになってさ。」


!?


「気づいたら、好きになってた。」


!?!?


なに…


私、中島先輩に告白されてる!?


「え…」


そんな…


ドキドキ。


先輩が、私を?


あ…。


優雨のさっき言ってた言葉が頭に浮かぶ。


モテモテ…


そういう意味か…。


優雨は…中島先輩の気持ちを知ってたんだ…。


それに、思えば変な話だ。


スケジュールの確認なら、部長の花村先輩から話があるはず。


「付き合ってくれない?」


…先輩。


私は俯く。


先輩の顔、見れない。


「…ごめんなさいっ…。」


気持ちは凄く嬉しいんです。


私の憧れてた人が、私のことを好きって言ってくれるなんて思ってなかった。


でも、その気持ちには答えられない。


ごめんなさい…。


「…そっか。」


先輩は静かにそう言った。


前の私だったら、絶対に身を乗り出して「はい!!」って言ってる。


もしかしたら、嬉しすぎて泣いちゃってたかも。


「…ほんとに、ごめんなさい。」


申し訳ない気持ちでいっぱい。


「謝んなって、その方が辛いわ。」


「すみませ…あ、ごめんなさい…あ。」


もう、私なにやってんの…。


「くっははっ、あなたおもしれぇな。」


…っ。


「あ、あんまりこのこと、気にしないで。

これからも今までどおり接してくれる?」


「はいっ、もちろんですっ…」


告白されて、振っちゃったけど、先輩とはこれからも話したいよ。


先輩の方からそう言ってくれて良かった。


「あとさ、ひとつ聞いていい?」


「はい。」


「オレを振った理由って、秀也だろ。」


「えぇ!?」


な、え?


みんなエスパーなの!?


私がすごい勢いで驚くと、先輩は大爆笑した。


「分かりやすっ!

しかもさ、当てちゃうと思うけど、肝試しの時だろ、付き合い出したの。」


「えぇっ!?」


そこまで当てられる!?


優雨も中島先輩も…


「ふっ、全部顔に書いてあるっ。

その調子だと、隠したとしても1週間以内に全員にバレるな。」


「えぇーっ!」


私はほっぺを手で覆う。


もう、驚くことしか出来ない。


「…いつでも相談に乗ってやるよ。

あ、嫌になったらオレん所来ていいからな?」


「えっ…」


「冗談。」


「えっ…。」


もう、なんでこんなに私の周りの人たちは優しいの。


私が気まずくならないように、気を遣ってくれてるんだよね。


「あ、そーだ、秀也に明日しごいてやるから覚悟しとけって言っといて。」


「は、はいっ…」


「じゃ、以上!

行っていいよ。」


「はい、失礼します…」


部屋を出てドアを閉める。


はぁ…。


最後、先輩の切なそうな笑顔を見て私も悲しくなる。


…ごめんなさい。


ごめんなさい、先輩。


私は…私の好きな人は…やっぱり、秀也くんです。

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