「やっほーっ!」
「あ、美優。」
1時55分、校門に着くともう既に数人集まっていた。
「わ、あなた久しぶり!
変わってない!
でもちょっと大人になった!」
「わ、沙羅か!
髪短くなってて分かんなかったよ!」
荻野沙羅(おぎのさら)は3年のクラス替えで一緒になった友達。
腰くらいまであるロングヘアだったのに、ショートボブになっててもう誰だかわからない。
「えへへ、彼氏に振られてイメチェンしました!」
「え、別れたの!?」
「うっそぉ、あんなに仲良さげだったのにー!」
他のみんなも会話に加わる。
そーいや、沙羅は大学入ってから彼氏が出来たとか言ってたっけ。
「あなたは?
どんな感じ?」
「へっ!?」
「恋愛状況、どーなのよっ。」
あぁ…。
「相変わらず、フリーだよっ…」
秀也のことが忘れられなくて。
告白してくれる人だっていた。
でも、私の心の中に、頭の中にいるのはいっつも秀也で。
まだ私、秀也のことが好きなんだと思う。
「高校の時はあのイケメン後輩と付き合ってたってのに、大学になって別れちゃうんだもん。
びっくりしたよー?」
「あはは…」
笑って誤魔化すことしか出来ない。
みんなにはどうやって別れたのかは言ってない。
理由を聞かれても答えられないから。
「あ、これで全員揃ったー?
行こっか。」
そう言って私たちは校門を通った。
生徒玄関ではなく、その横の職員玄関から入る。
「わ、なんか違和感ーっ!」
「ウチらスリッパ履いてるよ!?
上履き持ってくればよかったかなぁ?」
「今ちょうど授業中?
静かに行かないとね…」
「職員室いく?」
廊下を歩くと、懐かしい香り。
ここもあそこも、秀也と話したり時にはイチャイチャしたり、思い出の場所。
「一応ギリ3年だけは私らのこと知ってんだよね?」
「そーだね、ウチらが3年の時1年だったもんね。」
「お、お前らっ…」
美優が職員室に入ろうとドアに手をかけたところ、後ろから声がした。
「あっ。
神崎先生…」
「こんにちはっ…」
「あれっ、こんな先生いたっけ?」
沙羅がこそっと私に言う。
するとその声が神崎先生に聞こえてしまったのか、ははっと笑った。
「まぁ、オレは2年の化学の1部を担当してたからね。
オレのこと知らない生徒もいるか。」
沙羅とは2年の時同じクラスじゃないから、知らないのか。
「お久しぶりです。」
一応挨拶をするけど、気まずい。
別れた彼氏の兄…。
「あ!
そーだっ!!!」
神崎先生は急に思い出したように大声を出した。
「あなたさん、ちょっと研究室来てくれない?」
「…え?」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。