「え…私、ですか?」
「うん。」
みんなが怪訝な顔をしてこっちを見る。
「卒業前に、忘れ物してったの、オレ預かってるから。」
忘れ物?
そんな記憶はない、けど。
「じゃあ、あなた、あたし達中入ってるね?
もしかしたらブラブラするかも知らないから終わったら連絡して。」
「あ、うん…。」
美優たちは職員室の中へ入る。
「じゃ、行こ。」
「は、はいっ…」
ガチャッ。
先生が研究室のドアを開ける。
ここは、初めて秀也が手伝ってくれた時の思い出の部屋。
ぶつかって、ノートを落として、拾ってくれて、運んでくれて。
あれが私たちの出会い。
あんなことから始まった私たちの恋。
運命だって思ってたよ。
違ったの?
「あ、そこ座っていいよ。」
先生は私にソファーに座るように促す。
そして、ファイルがびっしり並べられた棚の端っこに手を伸ばす。
「あー、あった、はいこれ。」
先生はそう言って私に白い封筒を差し出した。
「…なんですか、これ。」
「とりあえず、開けてみな。」
…。
言われるがまま、私は封筒を開ける。
中には、二つ折りにされた紙が何枚か入っていた。
「…?」
私はその紙を開いてみる。
「!」
これは…
書き出しが『あなた先輩へ』から始まる手紙だった。
この字…。
見覚えのある字。
これは、
秀也からの手紙だ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。