第64話

ヒント
601
2018/06/23 12:53
全然、答えない。








『答えられない。』










ずっと、この返事だ。













赤いものが床に溜まってきている。











もうそろそろ、死ぬだろう。







時間がない。








急いで、聞き出さないと。






私は、殺人ピエロを脅した。






『答えて!じゃないと、首斬るよ。』









殺人ピエロの首の近くに刃物を近づけた。












これで答えないなら、殺してしまおう。











これだけやっても、答えないなら、どうせ、永遠に答えないだろう。














こんなことしても、答えないと思うけど。










そう思った。









だが、次の瞬間、予想外の答えが待っていた。








『手術・・・。』












えっ?声が変わった・・・?





聞いた事のある懐かしい声。






さっきとは、別人みたいだった。







『誰なの・・・?』





何故か、赤く染められた涙が目から流れてきた。





その瞬間、殺人ピエロは倒れた。







殺人ピエロは死んでしまった・・・。











手術とは何だ?











分からない。








でも、手術がヒントになることは、変わりない。













死ぬ直前、声が変わった。






気のせいではない。







断言出来る。





私は、もう一度、殺人ピエロの方を見た。









その時だった。








殺人ピエロのお面が壊れた。












死んだら、お面が壊れる仕組みなのか。











少しだけ気になった。












よく分からないけど、復讐出来た。











嬉しいはずなのに、悲しいような。









もやもやする。










この気持ちは何?











私は、殺人ピエロの首を斬りに行った。







でも、斬れない。












私の家の隣に住んでいる少年だったから。











その時、私の中で記憶が蘇ってきた。












その少年は、病院で手術した後に、行方不明になった。








突然だった・・・。












手術をした、その日の夜に消えた。








警察も色々調べたが、手掛かりが無く、分からなかった。













その後が問題だった・・・。









それから、二日後、その少年の存在なんて元から無かったように皆、忘れ去った。









警察も病院の人も皆・・・忘れてしまった・・・。











それに、肝心な母親さえ、忘れてしまっていた。





けど!







私だけは、忘れなかった。













それは、私もこの世界に、少年と同じ場所に来るって決まっていたからかもしれない。
















私は、腕も足も無くなった少年の前に座った。









私の足が少年の血で血まみれになった。







そして、私は最後に言った。










『颯太くん、今まで辛かったよね。私だけは颯太くんが存在していた事、何があっても忘れないよ。でも、だからって、許したわけじゃない。憎しみは消えない。けど、颯太くんとの楽しい思い出がたくさんある。颯太くんと遊んだりしたことは楽しかった。こんなことになってしまって、悲しいよ。急にいなくなって、寂しかった。しかも、皆、颯太くんのことを忘れちゃって・・・。長くなっちゃったね。今までありがとう。そして、さようなら。』








そして、首を斬った。







私は、自分の思ってることを伝えた。












届かないけど、全部伝えときたかった。








そうじゃないと、後悔する気がしたから。






そして私は、後ろを向いた。












誰かが居たから。











知らない人。






ずっと、止まってる。







その時、誰か分からない人が喋った。




『殺人ピエロにならねぇか?』










そう聞いてきた。























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