第5話

オムライス(2)
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2017/11/28 11:44
自宅へ戻ってきたあなたは、レジ袋の中から鶏肉とご飯を、冷蔵庫の中から卵と野菜とケチャップを取り出して、オムライスを作り始めた。
あなたの料理の腕前は普通である。
あなたより紗矢の方がうまい。
あなた

よし、できた!

オムライスは久しぶりに作るので少し手間取ったが、失敗はしなかった。
見た目はいい。
あなた

(味はどうかな。一応味見はしたけど。)

出来上がったオムライスとケチャップを持ってダイニングへ。
イスに座ってケチャップを構える。
あなた

…なんて書こうかな。

ケチャップで何を書こうか悩む。
結局「笑」と書いた。
オムライスをスプーンで少しすくって口に入れる。
あなた

…うん、おいしい。
でも、やっぱり紗矢の方がおいしいよなぁ。

あなたと紗矢のオムライスの味をつい比べてしまうものの、あなたはもぐもぐと食べ進めた。

オムライスを食べ終えると、食器を片付けてお風呂に入った。
夏が終わり夜はだいぶ涼しくなってきたので、冷えた体をしっかりあたためる。
お風呂から出ると、明日の予定を確認してベッドに横になった。
あたたまった体を冷やさないよう薄手の布団をかぶって目を閉じると、だんだんと深い眠りに落ちていった。

ひっく…ひっく…

ああ、今日もかな。
泣きじゃくる声が聞こえる。
あなたはその声のする方へ向かうと、やはりあの男の子がいた。

ひっく…ひっく…

あなたは男の子に近づく。
男の子を見てあなたは少し違和感を覚えた。
あなた

(…昨日より、ちょっと大きくなってるような気がする。)

そう、ちょっとだけ。
本当に、少しばかり。
幼稚園児くらいから小学1年生になったくらいのわずかな差。

あなたが男の子をじっと見つめていると、男の子が振り向いた。
昨日と同じで目には涙をいっぱい浮かべている。
しかし、展開は昨日とは違う。
あなたは驚いて固まっていると、男の子がゆっくりと口を開いた。
男の子
…オムライスの匂いがする。
あなたは男の子のその一言に驚愕した。
確かにオムライスはさっき食べたばかりだ。
しかし、これが夢ならば匂いなどあるはずがない。
…いや、夢ならばありえるのだろうか。
この場でごちゃごちゃ考えていても埒があかないと思ったあなたは、男の子に話しかけてみた。
あなた

オムライス、好きなの?

男の子
…うん。
男の子は少し間を空けて、こくりとうなずき返事をした。
会話ができることに、あなたはまた驚いた
あなた

…ぼく、名前は?

男の子
…りょう。
あなた

りょうくん…。
どうして、泣いているの?

あなたはしゃがみこんでりょうと目線を合わせ、りょうの目に浮かんでいる涙を指で拭ってあげた。
りょう
…あなたちゃんは、やっぱり優しいね。
りょうはあなたをじっと見つめた後、どこか悲しそうに微笑んだ。
その顔にはやはり、見覚えがある。
どうして分からないのだろうか。

そのとき、またあの強い風が吹く。
目を閉じたら消えてしまうのならば、目を閉じないようにしようとしたが、どうにも目をつぶってしまう。
目を開けると、やはりりょうの姿は消えていた。
今日の夢は、やけにリアルに感じられた。

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