あなたはお風呂から出てベッドに倒れこんだ。
朝の告白がきっかけで紗矢との話は一日中恋バナだったのだ。
あれやこれやといろいろ聞かれて、あなたはぐったりしていた。
あなたは今までを思い返してみた。
小学生の頃はよく男子とも話していたが、中学生になったら紗矢を中心とした女友達と一緒にいることが多くなり、男子と話すことはなくなってしまった気がする。
好きな人も小学生の頃はよく〇〇くんが好きとか言っていたけど、中学生ではそんなことはなかったはずだ。
高校生の頃はよく覚えていない。
いろいろと考えているうちにあなたは強い眠気に襲われ、そのまま眠りについてしまった。
ひっく…ひっく…
泣きじゃくる声が聞こえる。
うっ…ひっく…
…あれ。少し大人びた感じがする。
あなたはいつものごとく声が聞こえる方へ歩き出す。
ずいぶんと背が伸びた。
中学生くらいだろうか。
あなたと変わらないくらいの身長になっていた。
あなたが近づくと、りょうが振り向いて微笑んだ。
見た目だけじゃない。
声も変わっている。
子供っぽい高い声から、少し低い声に。
昨日もそうだ。
りょうはあなたの名前を言っていた。
あなたが教えた覚えはない。
りょうはくすっと笑って言った。
あなたが困惑していると、りょうはあなたを抱きしめた。
りょうがそう言って、昨日と同じ悲しそうな笑みを浮かべたとき、あの強い風が吹いた。
風が吹く中、あなたが一瞬目を開けて見えたのは
涙目になったりょうの悲しそうな笑顔だった。
その表情があなたの心に焼き付けられる。
そして再び目を開けた時には、やはりりょうは消えていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。