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第1話

さくらの季節。
44
2017/11/03 04:29
私、あなた。この物語の主人公。 
大好きな大好きな彼氏、たくやが毎日迎えに来てくれる。
その朝も、私はたくやを家の玄関で待っていた。
ーーばん!!
「痛った!!なにすんの!?」
「いや、なんかニヤニヤしてたから。」
「え、ほんと?恥ず。」
「なに?なんかいいことあったの?」
「ん?ううん...」
ーーたくやのこと考えてたなんて言えないよ
たくやは好きって言ってくれたことがない。
私はいつも不安に思っている。

風が横を通り抜けてさくらの季節を感じさせる。
「あっ。」
たくやがたちどまった。
「え?なに??」
どうしたの?と言いかけると私の目の前に女神がいた。
たくやはずっと見ている。見とれて、いる。
「た、たくや!!早く行かなきゃ遅刻するよ!!」
焦って言うと
「うん。」と言って歩き出した。
さっきまで話していたたくやが話さなくなって、
それが余計に悲しくて。
ーー多分、あの女の人のこと...

「あなた!」
しずかに呼ばれてきずいた。
今、放課後だ。
いきなり現実に戻って、「なに?なにかあったの?」
「だって、ずっとぼーっとしてるから。」
「あ、ごめん。ちょっと考え事。」
ーーー
しずかに話した。
「そっか。大丈夫?多分、考えすぎだよ。たくやくんはあなたの事が大好きなんだから。」
そうなのかな。
あの時のたくや、今でも忘れられない。
見たことない表情だった。
学校の玄関でたくやを待っていると
「あなた帰ろう。」
「う、うん。」
帰り道、無理に話したけどたくやは何かをさがしているようで、
ーー私、何を我慢してるのかな。彼女なのに。
そう思うと吹っ切れてしまって。
「たくや、あの朝の綺麗な人。心残りなの?」
「は?誰それ。」
「ご、誤魔化さないでよ!!知ってるんだから!朝からずっとぼーっとしてあの人のこと好きなんでしょ!?」
「は?え?何のことだよ。俺は、朝、そのえっと。」
「なに?」
「だから、えっと、俺は!朝、小さい頃のこと思い出したんだよ!」
「え?小さい頃のこと?」
「うん。あの桜並木を見て、覚えてないのか?小さい頃、あの桜並木の下でふたりで約束したこと。」
ーーあ、思い出した。あの下で結婚しようって約束したんだっけ。
「朝思い出してさ。ほら、あなたあとちょっとで16さいだろ?」
そうだった。忘れていた。
「誕生日プレセントと結婚のこと、考えてたんだ。」
「そうだったんだ。ごめんね。勘違いして。」
「ははっ。可愛かったけどね」
「も、もうっ!!からかわないでよ!」
ーーこっちはほんとに焦ってたのに。
「で?なにがいい?」
「んー。ケーキ!!」
「ケーキかよ。」
笑ってるたくやにつられて笑ってしまう。
よかった。ほんとに。


「早く!遅れちゃうよ!」
「はいはい。ふぁぁー。」
「もうっ!!あくびしないでよ!晴れ舞台の日に!」

「ーーやめる時も健やかなる時も愛することを誓いますか?」
『はいっ!!誓います!』


ーーーおわりーーー

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