ただ、がむしゃらに走る走る走る。
曲がり角を片っ端から曲がり、
行き止まりは、教室の中に入ってUターン。
海瀬君、足は早いけど私の行動が
読めないみたいで追いつけてない。
でも……。
もうそろそろ、限界。
後ろを見るとさっきと全然変わらないペースで
追いかけて来ている。
あ、ダメだ。
走り疲れて、足を止めた時
私たちは体育館に戻っていた。
息は切らしているものの、
まだまだ余裕そう。私なんて声すら出ないのに。
誰か水を……。
疲れはてていて、話なんて聞いてられなかった。
海瀬君の話に相づちを、なんとなく
うっていた。
あれ、待って待って待って。
やばい、全然話聞いて無かったよ!
なんで付き合う方向に流れてるんだ!?
もう、バスケットボールを取り出して
ゴールに向かう。
この人は、私がなんて言っても
なーんにも聞かないや。
めんどくさくなって、ボールの
行方を見届ける。
バンバンバンッ。
ボールの音が鳴り響く。
心地よい音を聞きながら考える。
大体、3Pシュートなんて
バスケやってないと入らないし。
ここで、失敗するだろう。
バンッ……。
ようやくボールを手に取った。
そのまま高くジャンプして、
手からボールが離れた。
シュッ。バンッバンバン……。
あーあ。
私は、今から海瀬君の彼女です。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。