手を取った?
うわ、手繋がれてるんだけど。
なんなんだ、こいつは。
こっちのペースまるで無視して、
自分のペースに引きずり込む。
手を離そうとすると、
そうだよ、私は"彼女"なんだ。
無駄な抵抗はやめて手を繋いでおこう。
そのまま、2人で帰り道を歩いていた。
私には、気になっていた事がいくつかあった。
一緒に帰っているときに、色々聞く。
困ったように笑って、質問に答える。
終始笑って喋る。
こいつは、いつも笑ってるんだな。
でも急に真剣な顔になって……。
さらりと照れるような事を言う。
私は、湊君好きじゃないけどドキッとする。
顔がかっこいいだけじゃなくて、
言葉のテクニックもすごいから
女の子がほっとかないんじゃないかな。
ていうか、3ヶ月。
あぁ、3ヶ月も彼女のふりしなきゃ。
大丈夫かな……?
どうしようもない不安しかない。
彼氏が、できたなんて言うのは皆には
内緒にしておこう。
イケメンな彼氏がいるなんて質問攻め
されるに決まってるし、嘘カレだし。
曲がり角の右方向を指差す。
ゴホゴホと湊君は咳き込む。
そう言って、なおも咳き込む。
くしゃりと、空いていた右手に
メモらしき物を入れる。
まだ、咳をする湊君の背中を
少し見てから、家に帰った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。