朝の支度を終わらせて、家を出る。
湊君が玄関で待っている。いつもの事。
そこからは、学校まで手を繋いで
登校する。最近は冷やかしにも強くなった。
校舎に入ってA組の前で分かれる。
いくら冷やかしに強くなっても、
鋭く冷たい女子の視線はまだ怖い。
でもそんなのには怯みたくない。
そうは思っているものの、
いくら私が強がっても彼女達は
毎日のように睨んでくる。
ひたすら耐えるしかないんだけどね。
1時間目、2時間目、3時間目……。
あっと言う間に、お昼になり裏庭へ向かう。
4人できゃいきゃいと昼食をとり、
5時間目になる。
放課後に、麻奈にそう頼まれた。
特にこの後用事は無いのでお願いを聞き入れる。
今日は、顧問の先生が全員出張で
部活が出来ないから暇だったし。
そう言いながら、麻奈が廊下を駆けて
委員会へむかった。
ええと、D組はこっちだったっけ……?
私のいるA組と湊君がいるD組は離れていて、
別校舎になっている。
別校舎と言っても渡り廊下でつながれている
だけで、道に迷うほどでは無い……。
と思ったが極度の方向音痴な私は
迷子になってしまった。
とにかく、戻ろう。
来た道を引き返そうと後ろを向いた時。
見覚えのある人が立っていた。
確か、B組の女子だった気がする。
学年朝会の時にいたから、なんとなくは
分かる。
なるべくにこやかに答える。
なんでいきなり話しかけてきたんだろう。
緊張と、不審に思う気持ちが
バレないように返事をする。
いきなり話って言われても……。
内心思ったが、女はめんどくさい。
これからの、友人関係にも響く。
話を聞くことにした。
どうして、場所を変えるんだろう。
嫌な予感しかしないけど、
もう行くと言ってしまったのだから
行くしかない。
ビクビクする気持ちを抑えて
彼女達についていった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。