前を歩いていた湊君が、唐突に喋り出す。
くるりと振り向く。
そしてびっくりしたような顔をした。
からりと笑う。
ずっと私の顔を見ないようにしてくれて
たんだよね。ありがとう。
私が笑うと、ほっとしたように
彼も笑った。
そして、私の頬を両手でおさえた。
冷たい手がいきなり触れて
思わずぎゅっと目を閉じた。
目を開けると真剣な透き通る瞳で
湊君が私を見ていた。
優しい声色で言う。
大丈夫。絶対忘れない。
また、"好き"が積もっていく。
こんな事思ってるなんて知らないでしょ。
そんな事言われたら、
ようやく止まった涙が溢れてきちゃう。
目を潤ませていると
湊君まで泣きそうになっていた。
笑いながら問う。
涙なんて、引っ込む位不思議だった。
2人で笑いあった。
ひとしきり笑った後、
ふと湊君が悲しそうな表情を見せた。
でも、それはほんの一瞬だけで。
見間違いかな?そう思った。
その後はそんな表情見せる事も
なく、あっと言う間に私の家。
まだ2人でいたかったな。
口に出しては言えないけど。
"また明日"、湊君に会える。
そう思うと明日が楽しみになってきた。
私って単純だな。1人、苦笑いをする。
あなたがいい夢を見れますように。
そっと願いながら目を閉じた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。