第23話

23.また明日の魔法
600
2017/11/20 12:53
前を歩いていた湊君が、唐突に喋り出す。
俺が、守るから
こんな目に2度とあわせないから
怖がらなくていいよ
あなた

うん……

くるりと振り向く。
そしてびっくりしたような顔をした。
あれ?もう泣いてないの?
あなた

とっくに泣き止んでたよー

からりと笑う。
ずっと私の顔を見ないようにしてくれて
たんだよね。ありがとう。
私が笑うと、ほっとしたように
彼も笑った。

そして、私の頬を両手でおさえた。
冷たい手がいきなり触れて
思わずぎゅっと目を閉じた。
目を開けると真剣な透き通る瞳で
湊君が私を見ていた。
あなたが
怖かったり、悲しかったり
寂しかったりした時は
俺がそばにいる
あなただけで悩まないで
抱え込まないで
俺が隣にいたって事を忘れないで
優しい声色で言う。
大丈夫。絶対忘れない。
また、"好き"が積もっていく。
こんな事思ってるなんて知らないでしょ。
あなた

分かった……ありがとう

そんな事言われたら、
ようやく止まった涙が溢れてきちゃう。
目を潤ませていると
湊君まで泣きそうになっていた。
あなた

ちょ……、なんで湊君まで
泣きそうなの?

笑いながら問う。
涙なんて、引っ込む位不思議だった。
いや……なんでもない
2人で笑いあった。
ひとしきり笑った後、
ふと湊君が悲しそうな表情を見せた。
でも、それはほんの一瞬だけで。
見間違いかな?そう思った。

その後はそんな表情見せる事も
なく、あっと言う間に私の家。
まだ2人でいたかったな。
口に出しては言えないけど。
また明日ね
あなた

うん、また明日

"また明日"、湊君に会える。
そう思うと明日が楽しみになってきた。
私って単純だな。1人、苦笑いをする。
あなた

お休み……

あなたがいい夢を見れますように。
そっと願いながら目を閉じた。

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