学校は6時間目まで終わっていた。
教室に入ろうとすると、
麻奈とすれ違った。
一瞬、私にびっくりしたような顔をして
ぱぁぁぁっと笑った。
褒められていい気分……、
と浮かれているとはっとなった。
そんなに匂いキツいかな……?
手首をじっと見つめてみる。
それを見た麻奈が
不思議そうな顔をする。
ちょっと張り切りすぎ?
急に自信が無くなる。
ひょっとしたらやりすぎなんじゃ……。
すると、麻奈が
さらりと言った。でも……。
自信が無くなって弱気になる。
先程までの前向きな気持ちが
恥ずかしくなる。
なんであんなに浮かれてたんだろう……。
目線を下に落として、足下を見つめる。
ガッツポーズを決める麻奈。
なんでこんなに輝いているんだろう。
麻奈がとても眩しい。
心から、自分に自信があるんだろうな。
そもそもなんで私、可愛くなろうと
思ったんだっけ。
湊君に変わった姿を見てほしい。
そう思ったから。
それなのに、うじうじしてたら
もったいない。
大丈夫、おかしくないよ。
麻奈の言っていた言葉がリピートされる。
よし、頑張るか。
麻奈の横を駆け抜ける。
後ろでひらひらと手を振ってくれた。
それを横目にしながら、下駄箱へ向かった。
こう呟いていたのも知らずに。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。