第29話

29.その表情は何度目?
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2017/11/30 13:49
ぱたぱたぱた……。
階段を下りていく。
下駄箱に着いた時、話し声が聞こえた。
声からして、湊君達だろうか。
やめろよ、もう分かってるから……
結城零
そんな事……!
お前あの子が本気でっ!
何やら、ケンカをしているようだ。
結城君のいきなりの大声に
驚いて手に持っていたスマホを落とす。

ガンッ!
物凄い勢いで床にぶつかる。
その音で2人ともこちらを向く。
湊君は悲しげな顔で。
結城君は怒ったような顔で。
あなた

ごめんね?待たせちゃった?

ここは、聞かなかったふりを
しておくのが賢明だろう。
そう考えて、今来たばかりの感じを
よそおった。

湊君はいつもみたいに、またふわりと笑った。
先程の悲しげな顔は嘘だったかのように、
いつも通りだった。
一方結城君は、ばつが悪そうに視線をそらした。

ううん!全然!もう行こう
手を繋いで歩き出す。
3人で並んで結城君の家へ向かう。
またケンカとかしないかな……。
心配していたが、2人とも
楽しそうに喋っていた。

自然すぎて逆に不自然な位。
何があったのか、聞く勇気もなく
少し違和感を感じる中で
ずっと内容を考えていた。

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