湊君にぐいぐいと迫られて、
苦しそうな結城君が声を上げ
そそくさと勉強用具を広げる。
さてと、私も勉強しようかな。
取りかかろうとしたのは、数学。
自分の問題集を鞄から出そうとするが、
見当たらない。
どこだろ。学校に置いてきちゃったのかな……。
数学やりたかったけど、仕方ないか。
そう思っていると結城君が席を立ち、
分厚い問題集を持ってきた。
くすりと笑って私に、
問題集をさしだす。
今度こそ、勉強しようと思った時
湊君が騒ぎ出した。
聞いてくるから教えようとしても、
真面目には聞いてくれないし。
もう!何なの!?
私のイライラはMAXに達した。
なるべく、物腰やわらかに言う。
零君もそうだ、そうだと言うように
横で頷いている。
肝心の湊君は少し悲しそうに、顔を歪めた。
気まずい空気が流れる。
のりでくっつけられたみたいに、
口が開かなくなる。
その空気に耐えられなくなったかのように
彼がへらりと笑った。
にやっと結城君が笑う。
それにつられたように、3人に笑顔が戻る。
私もノリに乗っておいた。
湊君がコンビニへ向かった。
のはいいが……。
やばい、この部屋で私と結城君2人だけだ。
どうしよ、話す事無いよ……。
私の思いをたち切るように、
結城君が切り出した。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。