第35話

35.クローゼットがピンチ
531
2017/12/21 10:27
街灯がポツポツと足下の道を照らす。
時折、吹く風が生身の部分を
芯から冷やす。

手だけはとても温かい。
湊君が、手を繋いでいてくれているから。
ちっぽけな事だけど、とても嬉しい。
こんな事でいちいち嬉しくなったり
悲しくなったりするなんて恋って大変だな。
と、少し苦笑いをこぼす。

しばらく歩いて、駅前の広場に出た。
クリスマス仕様に彩られた、
イルミネーションがピカピカと光る。
あなた

うわぁ……、綺麗

見とれていると、湊君が口を開いた。
あのさ……、
クリスマスは一緒に過ごさない?
緊張しているのか、私の手を握っている
手……。つまり、右手にぎゅっと力が入る。
そして、耳を赤く染めている。
良いに決まってるじゃん……!
私も左手に力を入れる。
あなた

もちろん

いてててて……。
と湊君が繋いでいる手をぶんぶんと振る。
私が笑うと彼も笑った。
ふわふわと白い吐息が冬の澄んだ空に
ゆっくりと舞っていった。
ジリリリリリリリリ……。
うっとおしいアラームを聞いて
ベットから起き上がる。なんだか昨日の事が、
夢のみたいでスマホのカレンダーを覗く。

12月25日
湊君とクリスマスデート♡

と書いてあるのを見てほっと息をついた。
デートか。なんだかんだで2人きりって
そんなになかったよね?
なに着ていこう。と今までにない位
うきうきしながらクローゼットを開いた。
が、テンションが一気に下がった。

冬物の服が全然無い。
秋物の薄手の服が何着かあるが、
さすがにそれでは寒すぎる。
おまけにパンツばっかりで、スカートがない。

うーんと考えた後、そこら辺にある
洋服を急いで着て駅前まで走った。

駅前についた私はお気に入りの店に
片っぱしから入った。
そして店員さんと、じっくり話をして
似合う服をばんばんカゴに入れた。

靴も買っちゃお。関係の無い物まで
買いまくった。

一通り買い物が終わって、私は1つ息を吐く。
目当ての物も買えたし、
カフェでおやつでも食べて帰ろ。
そう思い、カフェの方へ歩き出す。
すると、見覚えのある人影が見えた。

プリ小説オーディオドラマ