その人影はくるりとこちらを向く。
やっぱり瑠美先輩だった。
その輝く目をより一層きらきらと
輝かせ、私の名前を呼ぶ。
私の手に持っている大きな紙袋を
指さしてくすりと笑う。
瑠美先輩の手もとを見ると、
先輩も結構大きな紙袋を持っていた。
ここまで言って、
湊君と同時に先輩に
湊君の件を相談していた事を思い出す。
今度お昼奢りますねって……。
それからどれだけ時間がたったのか。
約束なんてすっかり忘れていた。
どれだけ最低なのよ、私……。
先輩が、次の言葉を催促するように
首を傾げる。
少し、驚いたような顔をしながら
私についてきてくれた。
カフェに入って、私はバニララテと苺のケーキを
先輩はキャラメルラテとチーズケーキを
注文して向かい合って座った。
そしてちびちびとケーキを
食べながら近況を話した。
付き合っているのは報告した。
もちろん、嘘カノだという事は除いて。
"素敵な彼氏"と言う言葉に、
顔がぼっと熱くなる。
湊君が素敵な事は知っているけど、
改めて言われるとやっぱり少し恥ずかしい。
唐突に言われてまぬけな声を出してしまった。
先輩はおかしそうにくすくすと笑う。
口もとを隠すその手は
指先まできちんとしている。
クリスマス仕様に、塗っているであろう
ネイルには雪の結晶が組み込まれている。
すると薬指に光る指輪に目がいった。
だが、左手では無く右手につけている。
右手にはめられた指輪を
気にしつつも、質問を返す。
キャラメルラテをつややかな
唇で1口飲んだ後、先輩は言った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!