只今の時刻、9時。
私は鏡の前でファッションショーをしていた。
スカート買ったはいいものの……。
試着するの忘れた!
私には到底着こなせないスカート達が
足下に何枚も落ちている。
なんで試着しなかったんだろう。
なんで昨日のうちに服選ばなかったんだろう。
今となってはどうしようもない後悔が
私を襲う。あぁ!もう!殴りたい!
昨日の自分を殴りたい!
こうしているうちにも、時間はどんどん
迫ってくる。
混乱した頭でファッションショーを続けていた。
プルルルルルル……。
電話の着信音が部屋に鳴り響く。
誰こんな忙しい時に!
八つ当たりしながら、スマホの画面を見る。
電話の相手は麻奈だった。
え?突然の事に頭がついていけない。
服の事、迫る時間の事でいっぱいいっぱいの
頭はミニパニック状態だった。
焦って玄関の扉を開ける。
そこには麻奈が、立っていた。
元気な声でズカズカと部屋に入っていった。
どういう事?聞こうと思って
麻奈の後について部屋に入った。
彼女はもう既に私のクローゼットを
ゴソゴソと漁っていた。
服を見て、ぽいぽいと投げながら
麻奈はこちらを見向きもせずに答えた。
そうだったんだ……。
パニックだった頭が徐々に冷静になっていった。
そして、こうして駆けつけて来てくれた
事がとても嬉しかった。
にこりと笑ってお礼を言った。
麻奈は少し手を止めた。
頼もしい友達を、持って良かった。
そうしみじみと思いながら、隣に座った。
私と彼女の下にはたくさんの服が
散乱している。
こんなのいつ買ったっけ?っていうような
ものまで引きずりだされていた。
昨日買ったスカートを見せると、顔をしかめた。
うぅ……。図星だった。
店員さんの口車にほいほいのせられて、
私っぽい服買ってなかったかも。
今度からはちゃんと試着して、
自分に合ってるものだけ買おう!
そんな事思っているうちにコーデが出来上がった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!