ぺちゃくちゃと喋りながら歩く。
どこへ向かってるかは分からないけど
楽しいからどこでもいいや。
うきうきとした気持ちで歩き続けた。
着いた先は、映画館だった。
そんなに前に言った事覚えていてくれたんだ。
心がぽっと温かくなった。
でも、ダメ。覚えてたのなんて偶然。
私の事なんてどうとも思ってない。
自分に言い聞かせる。
いつものように笑う。
この笑顔にはわたしに対する思いなんて
微塵も込められてないはず。
でも、なんで笑いかけられただけで
こんなにも嬉しくなってしまうのだろう。
心臓がぎゅっと苦しくなって、
自分の胸に手を当てる。
そしてこの前みたいに、小さく深呼吸。
湊が心配したような顔で私を覗き込む。
いけない、ぼーっとしてた。
せっかくのデートなのに。
とびきりの笑顔で言った。
今が幸せだから。今だけが幸せだから。
壊したくない。だから、
隠せ、隠せ、隠せ。本当の気持ちを隠せ。
湊と笑って分かれられるように。
握られたら手に力をぎゅっと込めた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。